お客さんのニコッが、わたしのニコッ。——こどもほんや | だれかの「ニコッ!」| 開催レポート
2026-07-02
2026-07-02
実店舗「NABO(ネイボ)」で歴史・詩歌の棚などを担当している笠井です。
社内では「本拾う人」として、様々な理由から古紙になってしまう本を次の読み手へと繋げる役割も担っています。
--本屋で働く人はどんな本を読んでいるのか。
読みたい本を、ただ読んでいるだけの記録だけれど、誰かの気になる一冊になるかもしれない。
そんな読書の時間を、ときどき綴っていこうと思います。
※この記事は過去にメールマガジンで配信した内容を、一部再編集のうえ掲載しています。
文庫には俗に「学術系文庫」と呼ばれるレーベルがある。
代表的なものとしては「岩波文庫」「講談社学術文庫」「ちくま学芸文庫」などが挙げられる。
私はなかでもちくま学芸文庫を好み、毎月刊行される新刊や古本を買い集めている。しかしこのレーベルの魅力について記すのは別の機会に譲ることにしよう。
今回取り上げる「学術系文庫」は「法蔵館文庫」だ。この文庫レーベルは法藏館から2019年に創刊された、言うなれば新入りである。版元である法藏館が仏教をはじめとする宗教に強みをもつだけに、文庫のラインアップも宗教関連が多数を占める。

私がこのレーベルの存在を知ったのは2年ほど前であるが、その契機となったのが黒田俊雄『王法と仏法』であった。
黒田は日本中世史研究の泰斗として知られるが、その著作を文庫で読めようとは思わず、驚いたことを思い出す。このような出会いのインパクトもあって、法蔵館文庫を最注目の「学術系文庫」としてその動向を追うようになった。

2024年の創刊5周年を控えて法蔵館文庫はこれまでの隔月での刊行から毎月の刊行へと舵を切る(毎月刊行はその後も続いている)。
そして5周年記念として刊行した松岡譲『法城を護る人々』全3巻は帯や栞などで「文豪とアルケミスト」とコラボしたことでも局地的に話題となった。
これは寺の子どもとして生まれ、夏目漱石の娘婿でもある松岡の自伝的小説である。
大寺院に生まれた主人公は旧態依然の教団や父親を痛烈に批判するのだが、その一方で自らの生き方に煩悶する。
長編で仏教用語も頻出するため、中巻までしか読み進めることができていないのだが、下巻も力を振り絞って読了したい。できるだろうか……

最近の刊行書籍で私の心をとらえたのは川田順造『曠野から』であった。
川田順造はアフリカを主なフィールドとして活躍した文化人類学者であり、『野生の思考』で知られるレヴィ=ストロースの著作も翻訳を行っている。
『曠野から』はアフリカでのフィールドワークの様子を綴ったエッセイだが、アフリカの自然や風俗を描く筆致はとてもみずみずしい。この本は1度中公文庫として文庫化されているのだが、現在は絶版となり某サイトでは数万円まで高騰している。復刊によって入手しやすくなったことは喜ばしい限りだ。
法蔵館文庫の刊行予定には催眠術に関するものがあるなど(その帯文には「あなたはだんだん読みたくな〜る」とある)、まだまだ法蔵館文庫への興味は尽きない。どうぞ末永いお付き合いを。
今回ご紹介した本はライブラリにまとめています。
まだ見ぬ本と出会う一助となれば幸いです。
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posted by 笠井瑞樹
上田市出身、2020年入社。買取りができなかった本を活用する模索や、本と茶NABOでの選書などを担当。
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