2026-07-02

本拾う人の読書録 2025年6月|「本と茶 NABO」スタッフコラム

実店舗「NABO(ネイボ)」で歴史・詩歌の棚などを担当している笠井です。

社内では「本拾う人」として、様々な理由から古紙になってしまう本を次の読み手へと繋げる役割も担っています。

--本屋で働く人はどんな本を読んでいるのか。

読みたい本を、ただ読んでいるだけの記録だけれど、誰かの気になる一冊になるかもしれない。
そんな読書の時間を、ときどき綴っていこうと思います。

※この記事は過去にメールマガジンで配信した内容を、一部再編集のうえ掲載しています。


2025年6月 沖縄と台湾、二つの島国に向き合って

沖縄の生活史

 

6月23日は太平洋戦争における沖縄での組織的戦闘が終結したことから、「沖縄慰霊の日」とされている。

私は数年前から、毎年6月を沖縄・琉球月間として、関係する書籍を読んできた。そして沖縄の日本復帰から50年目である2023年に刊行された『沖縄の生活史』を戦後80年となる今年、読了した。

この『沖縄の生活史』は日本復帰50年を契機として沖縄タイムス社で行われた企画を基に、聞き手と話し手のそれぞれ100人による生活史が編まれている。

聞き取りにあたっては、「復帰当日に何をしていたのか」を尋ねることが唯一の決まりとされた。しかしながら日々の生活に追われ、覚えていない人が大半である。

復帰当日も大事だが、それ以前以後にその人がどのように生きてきたのかが肝要であろう。百人百様の生活模様が聞き手の問いかけから(時には関係なく)描き出されていく。

沖縄独自の言葉が飛び交い、理解に苦しむこともあるが、その言葉は琉球の時代より「日本」とは異なる道のりを歩んできた沖縄の土地から生まれてきたものだ。重みをもって発せられる言葉、楽しく軽やかな言葉。その「語り」から私たちは何を受け取るだろうか。

隙間

 

コミックと小説を通して、沖縄と似た境遇にある台湾にも思いをはせる6月にもなった。

先頃完結した高妍(Gao-Yan)の『隙間』はデビュー作の『緑の歌』と同じく、著者をモデルとした主人公の成長譚である。

女子大生の楊洋(ヤンヤン)は台湾での現実から逃避するように沖縄へと旅立つ。留学先で出会った人々との交流を通して自分を見つめ直していく。

一人の女性が自分を探す旅に出るという、よくある物語ではある。しかし楊洋は台湾と沖縄の過去を見つめ、現在に立ち返る。

この過去と現在の往復において、政治学者の呉叡人(Wu, Rwei-ren)や政治雑誌『自由時代』の編集長であった鄭南榕(Cheng Nan-jung)、そして『沖縄戦の図』の作者、丸木位里・俊夫妻などを登場させる。彼女と彼らとのエピソードを描くことで厚みのある作品になっている。

海風クラブ

 

呉明益(Wu, Ming-yi)は現代台湾を代表する小説家の一人だ。

彼の作品は環境を主題とした、ファンタジー的なストーリーを特徴とする。最新作の『海風クラブ』も巨人が登場する神話と原住民と漢人が暮らす村で巻き起こる出来事が溶け合いながら展開していく。

巨人の存在とセメント工場の建設を巡って引き起こされる村人たちの対立は、私たちが自然、そしてそれまでに培われてきた歴史や文化とどのように向き合っていくべきなのかを問いかけてくる。

来年以降も私はふたつの島国に触れていく、そんな読書をすることだろう。


今回ご紹介した本はライブラリにまとめています。
まだ見ぬ本と出会う一助となれば幸いです。

2025年度読書リスト

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posted by 笠井瑞樹

上田市出身、2020年入社。買取りができなかった本を活用する模索や、本と茶NABOでの選書などを担当。

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