#Books for Children―読み終えた本がつなぐ、子どもたちの今と未来 – 一般社団法人 みんなのレモネードの会
2026-05-01
2026-05-01

5月5日は、こどもの日。
子どもたちの幸せや健やかな成長を願うこの日に、さまざまな事情のなかで日々を過ごす子どもたちに思いを向けるきっかけを届けたい。そんな思いから、このキャンペーンが生まれました。
読み終えた本を通じて寄付ができる「チャリボン」では、本の買取金額を子ども支援に取り組む団体へ届けることができます。
あなたの一冊が、支援を必要としている子どもたちの力になります。
本を通じてできる、もうひとつの応援のかたちを、ぜひ知ってください。

この記事で紹介するのは、「特定非営利活動法人 AYA」
病気や障がいのある子どもたちや医療的ケア児とそのご家族がこれまであきらめていた「スポーツ・芸術・文化」にふれる体験を安心して楽しめるよう、「体験格差」の解消を目指して活動している団体です。
今回、代表理事の中川さんにお話を伺いました。
子どもと一緒に映画館へ行く。
そんな何気ない体験が、実は叶わない家庭があることを知っていますか。
病気や障がいのある子どもたちとその家族にとって、外出そのものが大きなハードルになることがあります。医療的ケアが必要だったり、周囲への配慮が求められたりと、安心して楽しめる環境が整っていないためです。
実際に、医療的ケア児のいる家庭で「満足にお出かけできている」と答えた割合は2割未満。
年に2回以上、娯楽施設に行ける家庭はほとんどないといわれています。
こうした状況のなかで、「家族で体験する」という選択肢を届ける取り組みがあります。
その取り組みのひとつが、インクルーシブ映画上映会です。
病気や障がいのある子どもたちとその家族が、周囲に気兼ねすることなく映画を楽しめるよう、環境を整えながら各地で開催されています。
参加者の約7割が「家族で映画館に行くのは初めて」だといいます。
ただ、目指しているのは、単に「楽しい時間を提供すること」ではありません。
「目的は、笑顔にさせることではないんです」
そう語る中川さん。
たとえ映画を30分しか観られなかったとしても、「次は30分の映画に挑戦できる」と気づくことができる。
2分しか観られなかったとしても、「映画は難しいかもしれない」と知ることができる。
その経験自体が、その家族にとっての“選択肢”になる—。
体験を通して、「できるかもしれない」と思えるきっかけをつくること。
それこそが、この取り組みの本質です。

もうひとつ特徴的なのは、「誰でも参加できる」という形をあえて取っていないことです。
健常な子どもやその家族は一旦対象外とし、病気や障がいのある子どもとその家族に対象を絞る。
そのうえで、同じような立場の人たちが安心して過ごせる場をつくっています。
「何をインクルーシブにするかは、何をエクスクルーシブにするかを決めることでもある」
中川さんはそう話します。
「みんな一緒に」という言葉だけでは解決できない現実がある中で、対象を明確にすることで、安心できる空間が生まれています。

こうした上映会を実現するためには、多くの調整が必要です。
映画業界には制作・配給・興行という複雑な構造があり、それぞれとの連携が欠かせません。
さらに、消防法や避難経路の確保といった安全面の確認も必要です。
作品によっては、チラシひとつにも細かなルールがあり、許可を得るまでに多くのプロセスを踏む必要があります。
それでも、映画業界各社と直接連携し、全国で開催できる体制を築いてきました。
現在ではプロ野球チームとの連携も進み、活動の輪は着実に広がっています。
その背景には、「支援したいけれど方法がわからない」という事業者の存在があります。
こうした取り組みを一つひとつ形にし、運営のノウハウやルールを整えていくことで、
企業や施設が安心して参加できる“仕組み”がつくられていきます。
仕組みとして整備されていれば、各地の事業者が同じ形で取り組みを広げていくことができる。
一部の特別な活動にとどめるのではなく、誰もが再現できる形にしていくことを目指しています。
そして、実際に参加した家族の姿を見ることで、事業者自身も社会的な意義を実感していく。
この取り組みは、医療・福祉と事業者をつなぐ“橋渡し役”としてだけでなく、
体験の機会を社会に広げていくための基盤にもなっています。

一方で、運営には大きな課題もあります。
現在の主な収入源は助成金。寄付の仕組みづくりはまだ発展途上で、認定NPO法人となったのも最近のことです。
広報やエンジニア、ファンドレイザーなどの専門人材も不足しており、システム面でも手作業が多く残っています。
代表の中川さん自身も医師として働きながら団体の活動に多くの時間を割いています。
今後は寄付を軸とした運営体制へと移行し、数年後には年間1億円規模の活動を目指しているといいます。
チャリボンに参加したのは2023年11月から。
「団体側の負担がほとんどなく、参加しない理由がなかった」と中川さん。
これまでに、チャリボンを通じて約5万円の寄付が届けられています。
なお、本の読み聞かせなど“本に特化した活動”はあえて行っていません。本は家庭ごとに、⼦どもの特性に合わせて楽しんでいただくのが一番良いと思っているためです。
その代わりに向き合っているのは、「家族でやりたいのにできないこと」。
だからこそ、本をきっかけにした支援が、別の形の体験につながっていきます。

「好きな本を読む。観たい映画を観にいく。好きなアーティストのライブに行く。
私たちにとって当たり前にある『楽しみ』や『気分転換』の機会が持てない子どもたちや家族がいます。
もし、もう読まなくなった本があれば、その本を通じて、誰かが「行けなかった場所に行ける」かもしれません。
本を送るという小さな行動が、誰かの『できなかった』を『できるようになっていく』に変える支援として考えてくれたらうれしいです」


この取り組みの背景には、「体験の価値」や「インクルーシブの考え方」があります。
それらをより深く知るために、代表の中川さんにおすすめの本を教えていただきました。
人生で本当に大切なのは、お金ではなく「体験」や「思い出」であるという考え方を提示する一冊。
体験の機会をつくることの意味を考えるヒントになります。
『ミスマッチ 見えないユーザーを排除しない「インクルーシブ」なデザインへ 』
「何をインクルーシブにするかは、何をエクスクルーシブにするかを決めることでもある」という視点。
対象を明確にすることで安心できる場をつくるという考え方につながります。
支援がときに“構造的な暴力”になり得ることを指摘し、グレーゾーンの中で生きる視点を提示する一冊。
押しつけない支援のあり方を考えるきっかけになります。
posted by 深井望
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