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2021-11-05

納品書のウラ書き vol40 秋になってもオバケはいるんだよ

バリューブックスの本を購入していただいたお客様にお届けしている「本の納品書」
その裏面に掲載している書評「納品書のウラ書き」のバックナンバーを公開します。
納品書のウラ書きにまつわる詳しいストーリーはこちらをご覧ください。

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夏といえば怪談!と思っていたら、涼しい風に稲穂が揺れる、秋らしい陽気に突入していました。でもでも、おばけがいるのは夏だけじゃありません。それに、僕らを怖がらせる困った存在ではなく、意外と仲良くなれたりして。愛おしい彼らの姿をあなたに知ってほしくて、ユーモラスな絵本やおばけとの同棲生活を描いた漫画、怪異を読み解く作家の講演録など、3冊の本をご用意してみました。僕らの生活から真っ暗闇は消え、科学もぐんぐん発展し、おばけはちょっと肩身が狭い。それでもよき隣人のままでいられるよう、ページをめくるといたしましょう。

 

 

え? おばけは怖いから嫌いだって? そんなこと言ってしまうと、引っ込み思案のおばけは友だちになってくれないかも知れませんよ。実は、僕たちと同じようにおばけも友だちが欲しいんです。この本は、僕たちとおばけが友情を育む方法を教えてくれます。おばけを見つけたら、家にお招きして一緒に料理を楽しみ、怖い話を読み聞かせ、すやすや眠れるベッドを用意してあげましょう(クモの巣の屋根も忘れずに)。おばけはかわいらしいだけでなく、なんたって年をとりません。おばあさんになっても、おじいさんになっても、ずーっと一緒にいようね。

『おばけと友だちになる方法  

レベッカ・グリーン(文・イラスト) 岸本佐知子(翻訳)(福音館書店)

 

 

 

主人公の「のぼ」くんは、奇妙な彼女と同棲中。料理は上手で綺麗好きなのだけど、彼女が気持ちを伝えるときはホワイトボードに手書きの文字です。だって、姿も見えないし声も出せない、幽霊なのですから。不思議なふたり暮らしですが、一緒にDVDを観賞したり、時には趣味の違いで喧嘩をしたりと、案外楽しい生活なようです。とはいえ、仲が深まるに連れ気になる彼女のこと。名前、年齢、そもそも女の子なの……? のほほんとした日々とともに、だんだんと明らかになっていく彼女の秘密。ハートフルな共同生活は、ちょっぴりうらやましいです。

『のぼさんとカノジョ?』 

モリコロス 著(ノース・スターズ・ピクチャーズ)

 

 

 

 

小説家であり、妖怪研究家としても知られる京極夏彦が各地で話した講演を1冊にまとめたのが本書です。”妖怪”が人々の暮らしや体験の中からどのように生まれ、現在においてもある種の「ゆるキャラ」としてその存在を定着させてしまったのか、その背景を丹念に語ってくれます。理路整然と妖怪の正体を解剖してくれるその語り口は、知的好奇心をくすぐられる上質な授業のよう。妖怪を怪談やオカルトの世界に押し込めるでもなく、かと言って「あんなものは創作だ」と切って捨てるでもなく、僕らの隣にいるあやしい隣人との接し方を教えてくれます。

『「おばけ」と「ことば」のあやしいはなし   

京極夏彦著(文藝春秋)

posted by バリューブックス 編集部

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