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2024-12-16
2020-08-27
こんにちは、バリューブックスの飯田です。
先日、「怪談売買」という奇妙な体験をしてきました。怪談を売買する、ちょっとこれだけだとピンときませんよね。
バリューブックスが運営する書店、本屋未満 にて「怪異売買」イベントが実施されると聞き、恐る恐る参加してきました。
自分の体験した奇妙な話を売る日が来るなんて……
今回、怪談作家の宇津呂さんとオンラインで接続し、本屋未満にて怪談売買を実施してもらいました。宇津呂さんにとっても、オンラインでの怪談売買は初めてとのこと。
イベント会場は、窓を塞いだ真っ暗な個室。
モニター画面とろうそくの灯りだけを頼りに、宇津呂さんとの売買が始まりました。
みなさまも、どうぞ部屋を暗くしてお読みくださいね……
飯田:
こんにちは。今日は、怪談の売り買いができると聞いてやってきました。まずは自分が体験した奇妙な話を「売って」もよろしいでしょうか。
宇津呂:
ぜひ、よろしくお願いします。
飯田:
持ってきた話は2つあり、両方とも実体験です。まずは1つ目です……
当時交際していた女性と、長野県内を旅行した時の話です。
家に帰るには遅い時間。そのまま近場の宿にでも泊まろうと、インターネットで検索したところに連絡しました。個人経営だけど、ビジネスホテルに近いたたずまいで。
予約のために僕が電話すると、「もしもしぃ?」と幼い女の子の声が聞こえました。驚きつつも、「今日は泊まれますか?」と聞いたんですが、会話が通じる年齢でもないようでにっちもさっちもいかなくて。
「お父さんか、お母さんいる?」と聞いても、「んっー? んー?」と、話が通じない。電話を切って直接ホテルに行こうと思った瞬間、「今ぁどこにいますかーぁ?」と聞かれました。でも、電話では伝えづらい場所にいたので「そのまま行っちゃうね」と電話を切って、ホテルに向かいました。
ホテルに到着し、夫婦と思われるフロントの方に「今日は空いてますか?」と聞いたところ「ありますよ、こちらの宿帳にご記入をお願いします」との回答が。宿帳に記入しつつ、雑談がてら「さっき電話をした時に、女の子が出ちゃって。ちょっと困っちゃいました。でもかわいいですね。」なんて話をしたら、「何を言っているんだろう……」という怪訝な顔をされて。
僕も驚いて、「ここにお子さんはいませんか?」と聞いても「いないです」、「今日、宿泊しているお客さんのなかにも?」と聞いても「いないです」といった回答が。
なんだか不気味に感じ、向こうも「変な人が来たぞ」という表情をしていたので、「やっぱり泊まるのをやめます」と伝え、別のホテルに泊まることにしました。
飯田:
以上です。
あとで発信履歴を確認しても、電話番号は合っていたんですよね。なので、間違い電話ではない。そして、いま思うと最後の「どこにいますか?」の問いかけに答えていたらどうなっていたのか……
宇津呂:
そうですよね。ちゃんと答えていたら、どうなっていたかわからない。ちなみに、ホテルの名前ってわかりますか?
飯田:
一応、今日のために調べてきました。N駅でS屋というホテルだと思います。
宇津呂:
なるほど、いい話をありがとうございます。飯田さんの話を聞いて思い出した話があります。次は、自分が話してもいいでしょうか。
飯田:
はい、お願いします!
宇津呂:
宿やホテルって、怪談話のなかでも定番のひとつなんです。そのため話も色々とあるのですが、同じくカップルが体験したものを1つ。これは、田舎の片隅にある寂れたホテルに泊まったカップルの話で……
(話される内容と宇津呂さんの語り口が怖すぎて、顔が固まる自分)
宇津呂:
(中略)……すると、ベッドの脇に ○○○ の姿があったんです。
飯田:
うわっっ! 怖すぎる…… ありがとうございました……
(宇津呂さんの怪談は、実際の「怪談売買」や記事の最後に紹介している著作でお楽しみください)
ホテルの怪談は定番、とのことでしたが、どうして怖い話が集まるんでしょうか?
宇津呂:
おそらく、「念」が籠りやすいんだと思います。様々な思い、感情が残りやすい空間ですよね。特に、カップルが行くような場合は。
飯田:
なるほど。宇津呂さんの話を聞いて、ホテルに泊まるのが怖くなりました……
では、もう1つだけ、持ってきた話を。
これは、僕の姉がアメリカに短期留学をしていた際に撮った、写真にまつわる話です……
僕は三人兄弟の末っ子なんですが、長女である姉が、高校生のときにアメリカに短期留学していたんです。
留学からは無事に帰ってきたんですが、帰国してから写真を現像すると「変なものが映っていると」と言い出して。それは、古びた洋館を撮った1枚の写真。
その洋館はたまたま見つけて、「素敵な家だな」と思って写真を撮ったそうなんです。2階建ての建物で、バルコニーもありました。
よく見ると、バルコニーの手すりから白い腕だけがニョキッと生えていたんです。人の姿形はなく、本当にただ腕だけが手すりから生えているような形で。あまりにはっきり映っているので、家族みんなで「どうしようか」と家族会議になりました。
結局は、供養のために近くのお寺に任せることにしました。でも、お寺に写真を渡して一息ついたときに、ふと思ったんです。
おそらくここに映っているのはアメリカの幽霊。アメリカ人の幽霊にお経は効くんだろうか、と。
宇津呂:
ははは! おもしろいですね。
飯田:
最終的には、「ま、大丈夫だろう……」という結論になりました(笑)
宇津呂:
ありがとうございます。では、写真はもう手元にないんですよね。
飯田:
そうなんです。
宇津呂:
残念です。というのも、もし写真があれば、今の話には500円ぐらいの値がついていたかもしれません。
(※ 通常の怪談の買取額は100円なので、500円の値がつくのは破格!)
飯田:
ええ、そんなに! とはいえ、持ち続けるのはちょっと怖いので、供養してもらってよかったのかな。
きっと、宇津呂さんのもとにもたくさんの心霊写真がありますよね。「これは疑いようのない本物だ!」という写真もありますか?
宇津呂:
もちろんあります。心霊写真好きが高じて、我流ですが私も写真を撮るんです。なので、実は心霊写真ではなく、光の加減や写真の特性上そう見えてしまったんだな、というものも多いです。
しかし、なかには本物の心霊写真としか思えないものがあるのも、事実です。
飯田:
ちなみに、心霊写真らしきものが撮れてしまった場合は、どうするべきなんでしょうか?
宇津呂:
ものによるみたいですね。私も相談を受けることが多いのですが、本物と思えるものは霊感のある知り合いに見てもらっています。「持っていても大丈夫」と言われるものもありますよ。
飯田:
なるほど。ただ、心情的にはあまり持っていたくないですね……
宇津呂:
たとえば、スマホで心霊写真のようなものを撮ってしまった時は、まずその写真を削除する。その後、スマホの上に塩を盛って、神棚に置き、1週間の朝晩手を合わせたら大丈夫だそうです。
飯田:
まさか、スティーブ・ジョブスも iPhone に塩を盛られるとは思っていなかっただろうなぁ(笑)
飯田:
以上が、僕の売りたかった2つの怪談でした! 宇津呂さんは、こうした怪談売買を定期的に行っているんですよね。
怪談を売る人と買う人、どちらが多いんですか?
宇津呂:
どちらかと言えば売ってくれる人、つまり語ってくれる人が多いですね。怖い話や不思議な話って、誰にでも話せるものではないので、いい機会だと思ってくれる方が多いみたいです。
飯田:
たしかに、ちょっと人を選びますよね。
宇津呂:
そうなんです。そのため、話が終わった後に「すっきりしました」と言ってくださる方もいますね。
飯田:
そうして集めた怪談を、ご自身のライブで披露したり本にまとめたりされているんですね。
宇津呂:
はい。もちろん、本や怪談ライブで話すためには読後感やインパクトが必要です。そのため、聞いた話をすべて使うわけではありません。
飯田:
読後感やインパクト。それは、たとえば珍しい体験なら使いやすかったりするんですか?
宇津呂:
いえ、そうとは限りません。「金縛り」という体験を1つとっても、その感じ方や、どう解釈するかは人によって違いがあります。個々人によって違いが出るのが、怪談売買のおもしろい点ですね。
飯田:
遠慮なく言ってほしいのですが、僕の怪談は本や怪談ライブで採用される可能性はありますか……?
宇津呂:
まず、本については全体の流れがあるので一概には言い切れないんです。その本のテーマや文脈で、収録する話を決めていくんです。
飯田:
あ、なるほど!
宇津呂:
とはいえ、気になるところですよね。まず先に、「心霊写真の話」から。こちらは、やっぱり写真をメインテーマにしてしまうと、実物がないのが厳しいですね。ただ、写真自体ではなく、それをめぐる家族の話、として面白くできれば、可能性は十分あります。
飯田:
お! 嬉しいです!
宇津呂:
「ホテルの話」も面白いですね。見方によっては、その女の子を「座敷わらし」的な切り口で捉えることもできるかもしれない。そうすると、ちょっとほっこりするエピソードになりますよね。
逆に、「いまどこにいるの?」という問いにもし答えていたら……なんて、ゾッとする話にもなりえます。どちらの話も魅力的でした。
飯田:
ありがとうございます!
飯田:
宇津呂さんは、聞いた怪談そのまま話すのではなく、あくまでも素材として仕入れて、調理しているんですね。面白いです。
宇津呂:
はい。聞いた話をつくり変えることはしませんが、どこに力点をおくか、どういった視点を持つかによって、内容は変わるので。怪談を聞く時も、「これはどんな切り口で話したら面白いだろうか」意識しながら耳を傾けています。
飯田:
怪談を編集されているんですね。編集者である自分にとっても興味深い話です。
最後に、余談ではありますが、宇津呂さんは怖い話を「聞く」のと「語る」のでは、どちらがお好きなんですか?
宇津呂:
難しい質問ですねぇ(笑)
どちらも楽しいですが、やっぱり、まずは怪談を聞いて自分が怖がりたいですね。
飯田:
えっ、宇津呂さんでも怖がるんですね。
宇津呂:
怖がりますよ! でも、同時にうれしくもなっちゃうんです。すごく怖い話を聞くと、その後に「これを誰かに話したい!」とウキウキしてしまいます。ほかの人にも早く怖がってもらいたくて。
飯田:
「怖い」と「うれしい」の感情が共存しているんですね……!
『こわうれしい』とでも言うのかな、独特の感情で新鮮です(笑)
本日は、素敵なイベントをありがとうございました!
もしこれから怖い体験をしても、「怪談売買で話そう」と思えば気が楽になりそうです!
宇津呂:
はい、こちらこそありがとうございました!
怪談売買の結果、自分が話をした2つの話はそれぞれ100円でした。ちなみに2日間に渡って実施した本屋未満での怪談売買、一番高く売れた怪談は500円とのことです。(もし自分が写真を保管していたら……でもやっぱり早めに供養してもらってよかった)
みなさんも、機会があればぜひ、怪談売買を体験してみてください。
最後に、宇津呂さんの著書を紹介して終わりたいと思います。
こちらの本は、本屋未満でも購入可能です。
客と机を挟んで対峙して座り、乞われれば怪談実話を語り代金としてお金をいただく。逆に客が体験談を語ってくれれば、その代金をお支払いする――実際にイベントで行われた「怪談売買所」で語られた怪異の数々。
鏡越しに飛び降り自殺をした女と目が合って…「逆になる」
出勤途中に出会った見知らぬ女に大声で怒鳴られ続け…「人殺し」など
日常のふとした綻びに垣間見える恐怖、決して他人事ではない。
知り合いの通夜で酒を飲んでいたらそこにやってきた人とは「挨拶回り」
人の死期が色でわかる介護職員が見たある男性の色は…「死の色」
自分が見た夢の話にまつわる不思議な出来事「私の話」
漁師の船のスクリューに絡まるのはなんの因縁か…「絡まる」など51編を収録。日常の綻びから覗く、深く冥い異界。それらを紡いでいくと、いったいどこに逝きつくのか……。ようこそ「異怪巡りへ」へ。一度踏み入れると、もう戻ることはできませんのでお覚悟を。
そして! 怪談づくしではありますが、バリューブックスのスタッフがおすすめする怪談本の記事もございます。
まだまだひんやりしたい気分を味わいたいそこのあなた、こちらの記事もぜひ読んでみてくださいね。
posted by 飯田 光平
株式会社バリューブックス所属。編集者。神奈川県藤沢市生まれ。書店員をしたり、本のある空間をつくったり、本を編集したりしてきました。
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