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2020-09-16

私たち、大真面目ですから! 学ぶことが楽しくなる、奇妙な研究本を5冊紹介

 

新しい季節の芽吹きが感じられる時期になりましたね。9月といえば新学期。
学生時代の夏休み明け、「学校に行くのが、ちょっぴり憂鬱で……」となっていた方もいるかと思います(かくいう僕も、その1人)。

むしろ「勉強が大好き大好きで、学校に行けるのが楽しみ!」なんて思っていた方は、多くはないんじゃないでしょうか。

今回、「学ぶことって、おもしろかったんだ!」と思える5冊を選んでみました。

紹介するのは、一見どれも奇妙な研究を追求している人たち。でもそこには、世界を探究しようとする、たしかな炎が燃えているんです。

「しばらく勉強ができていないな」、「新しいなにかに、チャレンジしてみたい」なんてぼんやりでも考えている方に、ぜひ手に取ってもらえたら嬉しいです。

 

 

『ドーナツの穴だけ残して食べる方法』/大阪大学ショセキカプロジェクト

 

 

常識を疑うこと。時には、人にバカにされるかもしれない。けどそれは、とても豊かで贅沢な行為だということを気づかせてくれるのが、この1冊。
タイトルのとおり、「ドーナツをいかに穴だけ残して食べるか」を、工学、精神医学、経済学など、さまざまな学問の分野で活躍する知の先鋭たちに問う中で、紐解いていきます。

「そもそも穴の定義とは?」
「四次元空間にドーナツを置いてみる」

問い差し向けられるそれぞれの分野からのアプローチを読んでいると、学門に対する興味や親近感が湧いてきます(僕が、大学受ける前にこの本を読んでいたら、全く違う学部にいっていたかもな……)。

ちなみに、各章の間に挟まれている「世界のドーナツコラム」も、とっても緩くていいですよ。

 

『ドーナツの穴だけ残して食べる方法』

 

 

『ヘンな論文』/サンキュータツオ

 

 

河川敷の斜面に座るカップルは、なぜ等間隔で並んでいるのか?
そんな、だれもが深く考えないような疑問を、論文にまとめた研究者がいました。のべ704人、352組のカップルを観察し続け、論文にした目的はなんなのか。
現役の芸人「サンキュータツオ」さんが、さまざまな “ヘン” な論文を紹介してくれる1冊。ただまとめるだけでなく、その論文の書き手に直接取材までしてしまうところから、彼の並々ならぬ熱量がうかがえます。

「ヘン」だけど、本人たちはいたって真面目。

さあ、僕たちもヘンなことに情熱を燃やしていこうじゃありませんか!

 

『ヘンな論文』

 

 

『世にも奇妙な人体実験の歴史』/トレヴァー・ノートン

 

 

みなさんは、海でサメに腕を噛まれた後、再びその海に戻ることができますか?
高性能のマスクを開発するために、自ら毒ガスを吸い続ける勇気がありますか?
爆弾の爆発に、身をさらし続けることができますか?

科学の発展のために、狂ってるとしか言えないような実験を重ねてきた人たちがいました。人は、彼らのことを「マッドサイエンティスト」と呼ぶかもしれません。

でも僕は、究極の自己犠牲精神を持った、マッドサイエンティストたちに最大の敬意を示したい。
そんな彼らが、今日の科学の礎を築いてきたのだから。

 

『世にも奇妙な人体実験の歴史』

 

 

『家をせおって歩く』/村上慧

 

 

発泡スチロールでつくった家をせおって、日本中を歩いて回っている村上さん。そこで出会う人々、予期せぬ幸運とトラブル、新しいまなざしで捉える世界の姿を、本書は絵本のように僕たちに教えてくれます。

家をせおった人の「衣食住」は一体どんなものなのか。写真やイラストと一緒に、淡々とした口調で語られていきます。

電車に家を持ち込もうとすると、断られる。一方、フェリーは手荷物として認定され、追加料金を取られずに持ち込める。誰も知らない常識は、誰かが挑戦しないと見えてこない。

家をせおって歩く。この奇妙な挑戦を通してしか見えてこない、世界があります。本書を手にとってパラパラとめくるうちに、あなたも家を背負いたくなる(かも)。

 

『家をせおって歩く』

 

 

『人間をお休みしてヤギになってみた結果』/トーマス・ウェイツ

 

 

ふざけているようで、すごく大事なことに気づかせてくれるトーマスさん。前作の『ゼロからトースターを作ってみた結果』に続く、自分の頭と体をフル稼働させて真実に体当たりする、挑戦の経緯をまとめた本です。
人間が抱えがちな「悩み」から解放されるため、ヤギになろうと決意した彼。
ヤギの体を解剖して、骨格から真似しようと努力する。ヤギと同じ思考に近づくため、自分の脳をいじろうと脳科学者に依頼するも断られる(でも、めげない)。

彼のばかばかしい取り組みは、その実とても大真面目。協力をあおぐ他の科学者たちも、はじめは彼の挑戦に戸惑い、やめさせようと説得を続けますが、最後にはトーマスの熱意に巻き込まれていきます。

それがどんなに奇妙であれ、真剣な者を笑うことは誰にもできない。

最後、ヤギの群れと彼が邂逅する一瞬に、たまらなく感動を覚えてしまいました。

 

『人間をお休みしてヤギになってみた結果』

 

学ぶことを見つけた人は、美しい

 

今回紹介した彼らの研究風景を見ていると、おかしくて笑いたくもなるけれど、同時に大きな羨ましさを覚えます。自分が何をなすべきか。それを見つけた人は、ほんとうに美しいのです。
「学ぶ」という行為は、教室という空間に限ったものではありません。

また、「学ぶ」ことは学生の特権ではなく、「学びたい」と感じている万人に与えられた重要な活動です。
あなたが熱中していること、知りたくて、その身で感じたくてたまらないものはなんですか?

 

一緒に、学び続けましょう。世界はこんなに広くて深いのだから。

 

posted by 飯田 光平

株式会社バリューブックス所属。編集者。神奈川県藤沢市生まれ。書店員をしたり、本のある空間をつくったり、本を編集したりしてきました。

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