音楽x本がテーマのフェス「ミュージションフェス2025」開催!|ブックバス出店します
2024-11-26
2020-07-29
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近々もう少し広い家へ移るのですが、そうなると自然と生活も新調したくなるものですね。
このキッチンでもう少し料理に腕を振るおう、ソファを買ってゆっくり読書を堪能しよう、等々。自分の暮らしが、家に沿って形作られていることに気がつきます。
「そういえば、”よく住まう”ってどういうことなんだろう?」と気になり、『父の縁側、私の書斎』に手が伸びました。
本書は住まいをテーマにしたエッセイ集。著者の壇ふみさんは往年の名女優ですが、父親もまた日本を代表する文士、檀一雄。ただ、物書きの血、なんて言葉は野暮ですね。小気味よく上品な日本語が踊る彼女の文章には、独特の美しさが宿っています。
ここで描かれるのは、小さな段差に何度もつまずき、雨漏りに気を揉みながら過ごすふつうの日々。まぁ、時には愛犬を連れて坂口安吾が転がり込んでくるけれど。
悩みながらもどこか楽しげに暮らす彼女の姿を見て、よく住まうとは、工夫を重ねて家と折り合いをつけていく営みなのだと合点がいきました。
まぁまぁ、お待ちください。どうもマニアックなタイトルですが、「しあわせな人生ってなんだろう。」という帯文が気になりませんか。断熱やら気密やらがそんな大仰な話なのか?と。
中を開けば、そんな疑問はするすると氷解。快適な家が前提になるから、その先の”暮らし”を考えられる。自分の生活を自分の手でつくる、そんな当たり前の力強さを実感させられました。
posted by 飯田 光平
株式会社バリューブックス所属。編集者。神奈川県藤沢市生まれ。書店員をしたり、本のある空間をつくったり、本を編集したりしてきました。
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