EndPaper

本に触れる。
その小さなきっかけを届ける
ウェブマガジン。

2024-05-08

よりダイレクトでフェアな出版をめざして ―DR BY VALUE BOOKS PUBLISHING

著者・書店へのよりよい還元を目指して

 

DR BY VALUE BOOKS PUBLISHING(ディーアール・バイ・バリューブックス・パブリッシング)は、長く読み継がれる本づくりを目指す、バリューブックスの直取引レーベルです。

バリューブックスの販売サイトと、一部の限られた書店・小売店のみで販売を予定しています。出版取次を介さないため、他の大手オンラインストアには並びませんし、一般的な本のように、どこの書店でも購入できる本ではありません。

「DR」は「ダイレクト」を略したものです。なるべく顔が見える、具体的な人の存在が感じられる関係性の中で、直接お届けしていきます。そのぶん、売上から著者や書店・小売店に還元される割合を、通常の本よりも高く設定しています。

まず第一弾として吉本ばななさんの日記本、『724の世界 2023』の発売を予定しています。

 

デザイン:大西隆介、沼本明希子(directionQ)

 

予約はこちらから:https://www.valuebooks.jp/bp/VS0058753112
※締切:2024年5月12日(日)

 

なぜバリューブックスではこのような出版の方法に挑戦するのか、ご紹介したいと思います。

 

 

直販が増えれば利益が分けられる

 

私たちバリューブックスは、オンラインでの古本の買取・販売を主な事業としています。お客さまから買い取った古本を販売する場所として、Amazonは最大の、大切な取引先でもあります。いつもありがとうございます。

ですが、いずれにせよ、他社への依存度が高いことは経営として望ましくありません。そこで、ここ数年、自社の販売サイトに力を入れてきました。

よって、私たちは「DR BY VALUE BOOKS PUBLISHING」という出版社でありながら、「バリューブックス」というオンライン書店でもあります。

自社の販売サイトで売れた場合、出版社としての利益と、書店としての利益の、両方が残ります。つまり、書店としての利益が十分に出せれば、出版社としての利益は削ってもよいことになります。

そこで、私たちはこの本を、バリューブックスによる直販でなるべくたくさん売れるようにすることで、出版社としての利益を削り、そのぶんを著者や書店、読者に還元することができないかと考えました。

発売前にオンラインで予約ができるのはバリューブックスだけですから、それが増えれば増えるほど、余分に出た利益をフェアに、別のステークホルダーに分けられるというわけです。

 

一対一の関係で、丁寧に売ってくださる書店に卸す

 

とはいえ、吉本ばななさんの本が出るとなれば、それを売りたいという書店さんも、全国にたくさんあるはずです。

そして実際、まだまだ多くの人が、オンラインでばかり本を買うわけではありません。現物を手に取ってから買いたい人もいれば、書店に並ぶのを見て初めてその本の存在を知る人も、たくさんいるはずです。

とはいえ、一方で、いわゆる出版流通に乗せてしまうと、他のオンライン書店でも売られてしまいます。また、全国の書店に広く遍く並んだとしても、残念ながら、必ずしもすべての場所で、大切に売ってもらえるとは限りません。

そこで私たちは、直接連絡をくださり、丁寧に売ってくださる一部の書店・小売店さんだけに直接、卸させてもらう、という形をとることにしました。

とはいえ、卸のやり取りというのは、たくさんの手間とコストがかかります。だからこそ出版流通の仕組みがあるわけですが、今回はそこに乗せないことで利益をなるべく分けようとしているため、その取引のところにたくさんのコストをかけてしまうと、分けられるはずだった利益が出なくなってしまいます。

そこで、返品なしの買切での注文のみ、しかも5冊単位のみ、という形をとることにしました。掛率は65%で、通常よりも書店の利益が高くなります。5冊というのは、印刷所から届くときの一梱包の単位です。それを破かずにそのままお届けします。

書店さんにとっては、利益率は高いものの、ふだんよりも制限の多い取引になります。けれど、自分も書店をやっているのでわかるのですが、本気で売りたいと思える本であれば、大した制限ではありません。特に、リトルプレスなどを直取引で買切で仕入れている書店から見れば、普段からそうやって仕入れているので、あとは5冊売れると信じられるだけです。

 

取引方法が変われば、利益構造も、本のつくりも変わる

 

先ほど、利益を「著者や書店、読者に還元する」と書きました。より具体的にいえば、著者への印税、それを含む制作費、卸掛率(書店・小売店)への利益率に、それぞれ普通よりも多くの割合を充てています。

本の届け方やその取引方法をよりダイレクトなものにして、利益構造をスマートにし、モノとしての本のクオリティを上げて、より現状に即した、フェアでサステナブルな出版をめざす。私たちバリューブックスが「DR BY VALUE BOOKS PUBLISHING」を通じてやりたいのは、そのようなことです。

 

より詳しい背景や、思いはバリューブックス取締役内沼晋太郎のnoteにてまとめております

https://note.com/numa/n/n661e7d6bc546

 

著者や編集者、出版社のみなさんと取り組みたいこと

 

 

バリューブックスとコラボレーションしませんか

ここまで、今回の「DR BY VALUE BOOKS PUBLISHING」についての話をしてきましたが、実は自社での出版よりも前から、バリューブックスでは著者や出版社さんとのコラボレーションでの販売をすすめてきました

また、バリューブックス・パブリッシングとして自社で出版まで取り組んだ例として、坂本龍一さんの『坂本図書』もあります。

今回の「DR BY VALUE BOOKS PUBLISHING」は、自社で出版するだけでなく、直取引による流通まで行うことで、こうしたコラボレーションで行ってきたことをもっとも突き詰めた形であるともいえます

ですが、Amazon一強となってしまったこの出版業界の中に、少しだけでも別の回路を引いて、なめらかな流れをつくっていくような取り組みは、決して私たちだけでは実現できません。

これまでのコラボレーション事例のように、他社さんからの出版物でも、Amazonではなくバリューブックスに対して予約販売の先を振り向けていただくことで、著者の影響力を著者自身や出版プロモーションに還元することができます。

このような取り組みをぜひ、加速させていきたいと思っています。そのためには、JPROに登録されてAmazonに予約ページができるよりもずっと前の段階から、ご相談を進めておく必要があります。ご興味のある著者や編集者の方はぜひ、ご連絡いただければうれしいです。

編集してくださる方との、よい出会いもあればうれしいです。また最後に、このような取り組みをさらに推し進めることに関心があり、今回のような本を企画・編集できる、書籍編集者の方との出会いも求めています。採用という形でもフリーランスでも、我こそはという方がいればぜひ、ご連絡ください。

 

最後に

読者のみなさまへ

長くなりましたが、あらためまして。ぜひ本書をご予約ください。

https://www.valuebooks.jp/bp/VS0058753112
※予約締切:2024年5月12日

文章の主旨上、内容については触れませんでしたが、一日一日の短い文章の中に、宝物のような小さな発見がたくさんあり、生きていく元気がわいてくる、本当にすばらしい本です。造本も最高です。ぜひあなたのお手元に置いてください。

 

書店のみなさまへ

そして書店のみなさまは、ぜひ本書を仕入れてください。利益は出ないと書きましたが、私たちは本書をぜひたくさんの人に手に取っていただければと思っています。大切に売ってくださる書店さんと、よい関係を築いていきたいと思っています。

書店向け注文フォームはこちらから:https://forms.gle/Sefm24CfxHdoyAwo8

 

posted by 神谷周作

愛知県生まれ。
都内にてウェブメディアを運営する企業に勤めたのち、愛猫と一緒に上田に移住してきました。
趣味は、レンチキュラー印刷がされたグッズの収集。

BACK NUMBER