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2021-06-25

「本屋未満」が本屋になるまで|後編

 

バリューブックスの実店舗である「本屋未満」がオープンしてから約1年。

どう変化するかわからない未来に対して、いろいろなことを試しながら、つまづきながら店を作っていくやりかたもあるのかもしれないと、さまざまな挑戦を重ねてきました。

 

前編の記事では、いつか未満じゃなくなる日を目指して走ってきたこれまでの1年を、バリューブックス取締役の内沼晋太郎、本屋未満スタッフ3名とともに振り返りました。

後編では、ついに本屋未満が店舗名を変え、リニューアルを決意した経緯、それぞれのスタッフの思いついて触れていきたいと思います。

 

 

左から、池上、向口、市川。聞き手は前編同様、バリューブックス取締役内沼

 

 

NABO から本屋未満、そして再び NABO へ

 

内沼:
ついに本屋未満じゃなくなる日がきたと・・・。いつ未満じゃなくすのか?については、これまでも時折話し合ってきましたよね。今回やっとみんなの足並みがそろったというか。向口さんは、いつぐらいから未満じゃなくてもいいと思い始めたんですか。

 

 

向口:
昨年11月におこなった、1回目のリニューアルが終わったタイミングではもう別の店名を名乗ってもいいのじゃないかと思っていました。お店がある程度出来上がって、これなら本屋だと名乗れるなと。もちろんまだまだ至らないところはあるけど、それは続けながら追求していけばいいかと考えていました。

 

 

 

内沼:
向口さんは、入社したタイミング的にも本屋未満からのスタートであったので、ある種の焦りというか、早くちゃんとしなきゃみたいな気持ちがあったのかもしれませんね。

 

向口:
この状況下で、実店舗をやること自体に悩んでた時期もありました。その中でお店をやるのであれば、自分たちが向き合う姿勢を見せるためにも、ある程度のタイミングで、きちんと名乗りたいなというのは個人的には思っていて。

ただ、池上さんや市川さんは本屋未満以前からもこの店に関わっていて、だからこそ生まれてくる思いもあったのだと思います。だから、やっぱり待たなきゃいけないなと思ったんです。待ちながらも、どういう隣人になるか納得できるまで一緒に考えていこうと。

その過程でどんどんお店も良くなっていきましたし、結果スタッフみんなが納得できた段階で変えれることになったのは、とてもうれしいです。

 

内沼:
市川さんも前の NABO で店に立っていましたよね。リニューアルについて、いまはどう考えていますか。

 

 

 

 

市川:
そもそも最初は本屋未満という名前を消化できるまでに少し時間がかかりました(笑)

正直に話すと、当時の NABO の方が自分的には、しっくりきていたこともあって。ただ、前とは違う形で先に向かってるというのは理解していて、僕も徐々にみんなと歩幅が合ってきたのかなと。

そうなってくると、今度また NABO に戻ることを考えたら、この本屋未満というのがもったいなくなると言いますか、一種の寂しさもあります(笑) 名付けられることによってお店に人格みたいなものが宿り、そこで働くスタッフの心にこんなにも影響を与えるものなんだと驚いています。

 

内沼:
市川さんはブックバスもされていますが、同じ本を売る空間とはいえ、お店とバスでも、結構な違いがありそうです。

 

 

 

 

市川:
バスは呼んでいただいて、こちらから出向いて、場所を借りてやるという、言わば迎え入れてもらえる側なのですが、お店は迎え入れる側ですよね。そこに大きな違いがあると思います。お店として本屋未満から、また NABO に変わってもそこは変わらない部分であって、来てくださる方を常に暖かく迎え入れたいなと思っています。

 

内沼:
池上さんはどうでしょうか。僕の印象だと、池上さんはずっと店の名前が「NABO」になるのを拒んでいた、という印象なのですが・・・。

 

 

 

 

池上:
そうですね(笑) わたしは以前の NABO がスタートした2015年1月頃にバリューブックスに入社して、NABO 店長のようなことを2年経て、退職したり、アルバイトとして復活したり、また正社員として復活してみたり、いろいろな関わり方をしているのですけど・・・。

 

内沼:
そうでしたよね。2019年に NABO が閉店すると知ったときはどんな感じだったんですか?

 

池上:
その時わたしはアルバイトで、2軒隣のバリューブックスラボの店番と本の選書しかやっておらず、NABOには関わっていなかったので、その時 NABO で働いてたみんながそう決めたならそれでいい、という気持ちでした。NABO が閉店したあともわたしはラボを毎週末開けていたので、お客さんから NABO のこれからについてしょっちゅう聞かれたりしてました。

 

 

バリューブックス ラボ

 

 

内沼:
たしかに、お店の近くの中華屋さんに行った時にも聞かれてましたよね(笑)

 

池上:
そうなんです!(笑) NABO 閉店も、「閉店」というよりも「リニューアルオープンのためにいったん閉める」みたいなお知らせを出していたので、そのわりに3ヶ月経っても半年経っても始まらない、どうなってんだ・・?と周りのお客さんから思われてたんだと思います。それでわたしも、この店はやるのか?やらないのか・・?コロナのことがあって、お店をやるということ自体難しくなってきたのもわかるから、やらないんだったらもういっそわたしがちゃんと NABO をおしまいにしてやりたいな・・と思って、お弔いみたいな気持ちで再びこの店に関わり始めたというところがあります。

 

内沼:
お弔いですか!?(笑) 再スタートではなく。そのあたりの気持ちが NABO という店名を拒み続けていた理由になるのでしょうか

 

池上:
そうだと思います。 NABO っていう名前をもういちどそんなにカンタンに店につけてしまうなら、じゃあなんで閉めたんだよ、と思わずにはいられなかったんですよね・・。わたしが店に立っていたときの NABO は、上田に住む人たちが主催だったりお客さんだったりで「毎日イベントを開催する」ということをやっていて、でもそれはちょっともう自分の体力的にも難しいし、店としてもその役割みたいなものは終えた感じがあったので、でもそれをやらないで、何を持ってこの店を NABO(デンマーク語で、「隣人」の意味)と意味付ければいいのか、自分の中でどうもしっくりこなくて・・・。

 

 

2014年、プレオープン時のカード

 

 

内沼:
なるほど。前の NABO を知っている池上さんならではの葛藤という感じですね。このあたり向口さんはどう思っていたんでしょう

 

向口:
自分は以前の NABO で働いていたわけではなかったので、ここはもう、なるほど、と思って待つしかないのかな・・と思っていました。

 

池上:
いやほんとに・・向口さんには、半年前の2020年の11月頃には店名を「NABO」にしたいという気持ちがあることを聞いていたので、ほんとによく待ってくれたものだなあと思います。ここまで「本屋未満」の期間が長くなってしまったのは、完全にわたしのせいです!笑 申し訳ない・・・。そして、正直待ってもらっても気持ちは変わらないかもしれないと思ってもいたんですけど・・

 

内沼:
でも、「本屋未満」を終えての新しい店名は・・・

 

池上:
「 NABO 」です!

 

 

本屋未満から「本と茶 NABO 」に店名をリニューアルし、新たに作成した店舗ロゴ。
以前と同じ店名だけど「戻った」わけでなく「ちょっと違う形」だということを表したくてフォントや形を変更。
シンプルなロゴだからあっさり決まった・・と思いきや、手書き文字含め50パターン以上のデザイン案の中から何度も作り直しを経て決定した、既に思い入れのあるロゴ。

 

 

内沼:
NABO(ネイボ)! ロゴも以前のものからリニューアルして・・・。池上さんの今の話からすると急展開ですが、なにがどう納得いったんでしょうか。

 

池上:
そうですね、ちょっとこの先のことは、お店全体のコンセプトとかではなく、わたし個人の思ったことなのですが、結局、この上田の町に住むひとが訪れてくれて、喜んでくれるようなお店じゃないと、わたし自身がぜんぜんつまらないな、と思ったということがあります。あたりまえのことかもしれないんですけど。

 

内沼:
でも、お店をやる上でものすごく大切なことですよね。それでやっぱり、NABO(隣人)っていうものが、池上さんにとっても店にとっても大事なキーワードになりそうだと。

 

池上:
大事でもあるし、結局そこから離れられなかった、という感じでしょうか・・。あと大きかったのは『二度と行けない(上田の)あの店で』というZINEを、作ったあたりのことですかね。

 

 

 

 

内沼:
都築響一さんの『Neverland Diner―二度と行けないあの店で』刊行記念フェアをお店でやったときに、合わせて「本屋未満」オリジナルで作ったZINEですね。これが一体、どういう気付きに繋がったんでしょうか

 

池上:
これは、このお店がある上田市の「もう2度と行けないお店」の思い出を上田出身だったり、いま上田に住んでいるひと6名に書いてもらって、その文章をわたしが自宅で印刷してホチキス留めした地味〜な冊子なんですけど、あたらしい「上田みやげ」みたいになればうれしいなーくらいの気持ちで作ったんですね。

でも、Neverland Diner―二度と行けないあの店で』の出版社、ケンエレブックスのかたが面白がってくださり、これをたくさん買ってくれて、全国のいろんな本屋さんに配ってくれたんです。それがきっかけで、今ほかの地方版の「二度と行けないあの店で」冊子がいくつも生まれ始めていて。

 

内沼:
なるほど、いいですね。

 

池上:
それで、この冊子を「オンラインでは買えないんですか?」という問い合わせもいただいたりして、なんかこの、この街の「いい」と思ったことを、身近なNABO(隣人)たちの力を借りて、編集して作ったものが、思いもよらない効果を生んだというか、だいぶ遠くの方まで飛んでいったなー、というのが自分的にはすごく楽しかったし発見で。

以前のNABOは「コミュニティをかき混ぜる」というものをすごく意識してお店をやっていたのですが、そのことに関しては正直もう一生懸命やったと思っているし、やってたわたしや当時のスタッフが疲弊してしまって。そうではなく、自分も楽しくこの上田の街の良さとか、NABO(隣人)の力を借りて一緒に作れるモノ、できることをどんどんやって、オンラインの力とかもかりて、遠くにビュンビュン飛ばして行くことでこの街の「隣人」としての新しい役割が果たせるんじゃないか?と、『二度と行けない(上田の)あの店で』を作って感じました。

身近にある街のことや、人のこと、隣人たちと一緒に作ったものを編集して発信する、そういうふうなことを思い描いて、すごく楽しそうだと思いました。そして、それなら店の名前はNABOしかないや、とようやく思えたのが、つい最近です。

 

 

2020年6月の店内と、1年後の2021年6月の店内。
「未満」の期間でたくさんのものが積み上がって行った。

 

 

寄り添いながら、変化を重ねる NABO のこれから

 

内沼:
めでたく、店舗の名前を「NABO」にしよう、と僕を含めて全員一致したわけですね。リニューアルは、7月の・・・。

 

向口:
9日です。バリューブックスの創業14周年記念に近いタイミングでもあり、リニューアルイベントの開催にむけてこしらえてる最中です。

 

内沼:
もうほんと間近ですね。リニューアル後の、“これから ”の部分についても少し聞ければと思っています。「本とお茶」の店としての NABO でいうと、年が明けてからはこれまでの珈琲の提供をやめて、お茶にシフトしたのはどういった経緯で。

 

池上:
NABO が最初に始まった2015年頃は、街にあんまりカフェががなかったんですね。わたしが知っているだけでも2015年から2021年のあいだに7店舗増えて、すごく賑やかになりました。おいしい珈琲を出してくれる場所はいっぱいあるから、もう大丈夫だと思えたのは1つのきっかけでした。

 

内沼:
それはいい話ですね。珈琲を提供するお店としての役割を終えたというわけだ。

 

池上:
そうなんです。CHAIROの茶葉は、台湾に直接買い付けに行ったり、自分たちでお茶摘みに行ったりすごく丁寧に選んだおいしい茶葉だっていうのもあって、まだ街の中にあんまりない「お茶」を提供するお店になったほうが、街のためにも自分たちのためにも、きっといいんだろうなと思えて。

 

 

 

 

内沼:
本屋としてはどうでしょう? いわゆる話題の新刊は揃えつつも、捨てたくない本なども共存する、バリューブックスらしさが出た面白い店舗になっているなと感じています。その中で、もっとこうしていきたいといったことはありますか。

 

向口:
どちらかといいますと、これまでは「こういった本を売りたい」といった思いが強かったのですが、お店を約1年続けてくる中で、その思いも変わっていて。お店に来てくれた方が〇〇という本を買ってくれたから、それに関連する本をもっと充実してみようと思えたりだとか。そういった意味では、街と人に合わせて変わっていきたいという思いはあって、これからもどんどん変化していきたいなと考えています。

 

内沼:
お店に来てくれる方の層として、見えてる層はあったりしますか?

 

向口:
そこは一枚岩ではないなと思ってます。本好きの方ももちろん来てくれていますし、最近でいうと5月から提供を始めたマフィンが入り口となって来てくださる方もいます。

その中で思うのが、自分の思ういい本は、もしかしたら来てくれた方にとってはいい本ではない可能性はあるなと。なにがいいと感じるのかは、いろいろなレイヤーがあると思うんです。そういう意味でいま言ったように、街や人に合わせること、寄り添うところは寄り添っていくことが大事なんだと強く感じます。

 

 

 

 

内沼:
これからの NABO もそうですが、他の2店舗のこれからも考えていきたいですよね。

今はこんな状況であって、遠方からもぜひ来てくださいと発信していくことはいまだに躊躇してしまうけれども、本屋が集まった、本屋ストリートみたいな感じになって、そこに本好きが集まってくるみたいなことができたら面白いなと個人的には思うことがあって。

 

池上:
そうですね。 しかし正直なことを言えば、NABOとバリューブックスラボの2店舗をやっていくだけでもはやけっこう手一杯で・・!3店舗目の通称「はるのや」の物件は今のところほぼ手付かずなんです。 この辺に本屋出したいと熱い思いを持った人が出てきたらいいなあ・・・。「ここでバリューブックスと一緒にこんな本屋をやりたいんです!」みたいな方がドアノックで来てくれたりしたらすごくうれしい(笑)募集してます!

 

 

3店舗目の店、通称「はるのや」。NABOの斜向かいあたりにある店舗で、もと化粧品屋の棚をそのまま本棚として使っている。使い道が決まるまでは「捨てたくない本」の販売店舗として開けている。

 

 

市川:
あとはお店の使い道として、例えば1日本屋体験みたいなものや、NABO が休みの時には1日貸し切りの提供とかもできるなと思っていて。いろんな形でこの店を活用してくれる方が今後増えてくれたらいいし、同時に自分たちができることも模索したいと思っています。

 

内沼:
そこは未満のイズムというか、お店としてやっていくことが変化していくことはいいことだと捉えていきたいですよね。引き続きいいお店とはなんなのか、考え続けていきたいなと思います。

 

 

旧NABO時代に4年間使った看板と、本屋未満の看板を前に。これからも、本屋の日々は続きます。

 

 

 

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posted by 神谷周作

愛知県生まれ。
都内にてウェブメディアを運営する企業に勤めたのち、愛猫と一緒に上田に移住してきました。
趣味は、レンチキュラー印刷がされたグッズの収集。

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