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2021-02-01

本好きに愛されるサービスを目指して ━━ バリューブックス リニューアルオープン ━━

 

2021年2月、バリューブックスのサイトが大幅にリニューアルしました。どのような意図をもってのリニューアルなのか、この先にどのような未来を想定しているのか。バリューブックスの内沼晋太郎が、代表の中村大樹に聞きました。

 

「古本買取サービス」から「本を読む人の支援サービス」への拡張

 

写真左:中村大樹 写真右:内沼晋太郎

 

内沼:
今回のリニューアルは、バリューブックスにとって、とても大きな変化であるといえると思います。一番の違いは何でしょうか。

中村:
一言でいえば、バリューブックスを単なる「古本買取サービス」から、「本を読む人の支援サービス」へと進化させるための、第一歩となるリニューアルと考えています。

まず、これは少し前から実装していたのですが、買取だけでなく、自社サイトでの販売をスタートしました。これまでAmazonや楽天などで販売していたときには個別に送料がかかってしまっていたのですが、自社サイトではまとめて注文することができます。また、在庫はまだまだ少ないですが、古本だけでなく、新品の本の販売もはじまっています。

そこに、本を管理するライブラリ機能や、本を見つけるための豊富な検索機能やメディア機能などが合わさって、ひとつの総合的なサービスになりました。

とはいえ、今回のリニューアルはあくまで第一歩、とりあえず最低限「使ってください」といえる形ができたという段階です。

 

 

内沼:
まだまだ無数にやりたいことがありますよね。それでも、今回のリニューアルで、未来はこういうサービスになるのではないか、という期待感を持ってもらったり、妄想を膨らませてもらったりする原型はできたと感じます。実際、トップページの印象は、だいぶ変わりましたね。

中村:
買取サービスの内容を知らせるだけの状態だと、どうしても静的なサイトになってしまいますが、今回のリニューアルで、本を売る人、買う人、読む人が定期的に訪れたくなる、動的なページになるようにしました。

その部分を主に担っているのは、ライブラリ機能のバージョンアップです。いままではユーザー自身しか見れなかったライブラリを、フォルダ単位で公開/非公開を選んで、人に見せることができるようになりました。

 

 

内沼:
もともとライブラリ機能は、自分が過去に売った本が自動でフォルダでまとめて見れたりするので、すごく便利だなと思っていましたが、それに加えて、自分がテーマに沿って選書したリストや、持っている本のリスト、売ろうか悩んでいる本のリストや、いつか欲しい本のリストなど、いろんなリストを公開して楽しめるということですよね。

中村:
また、これは地味なところですが、キーワード検索も大幅にバージョンアップしました。検索はなかなか奥が深く、一筋縄ではいかないところなのです。以前のものは正直、全然探している本が見つからず、満足いく状態にはほど遠いものでしたが、なんとか最低限、使えるレベルになったかと思います。

また、いまはまだ実装できていませんが、前述のライブラリのフォルダも、公開されたものは検索結果にも出てくるようにしたいと考えています。たとえば「サッカー」と検索したときに、誰かが公開した「サッカー漫画」のライブラリのフォルダが出てくるような感じです。

内沼:
そうすることで、本と出会いやすくしようということですね。

中村:
その通りです。

 

「サスティナブル買取」ってなに? 自分に合うサービスを選ぶ時代に

 

 

内沼:
もちろん一方で、買取のサービスは続けるわけですよね。

中村:
はい、これからも古本の買取がサービスの核であることは間違いありません。そして今回のリニューアルから、バリューブックスの買取に「サスティナブル買取」という名前がつきました。それに伴い、かつてやっていた「一括買取」とは違う、「仕分け買取」という新しいジャンルだということも明確にしました。

内沼:
以前から送料を有料にすることで、買取価格をこれまでの1.5倍にするということをやっていますが、今回さらに査定基準を見直していわゆる「リセール商品」、一定の値段がつく商品を、さらに高く買い取ることにしたんですよね。

中村:
はい。そもそも人が「本を売りたい」と思ったとき、かつてバリューブックスがやっていたような古本の一括買取も、メルカリのようなフリマアプリ、いわゆるCtoCも、必ずしもすべての人にとっての最適解ではないと考えているんです。

 

 

一般論ですが、そもそも中古品を販売するときは、そもそも売れるかわからない、売れるとしてもいつ売れるかわからないという在庫のリスクがあります。また、売れた瞬間、代金や発送先に関するやり取りをして、梱包して発送してという、人的なコストがかかります。

一括買取は、その在庫のリスクや人的なコストをまとめて、古本屋側に任せるサービスです。そのぶん、どうしても買取金額が安くなります。値段がつけられない本もたくさんあります。にもかかわらず、あらゆる本をまとめて送料無料で引き受ける場合、最終的に値段のつけられない本の輸送や、その査定や保管などあらゆるコストは、会社全体としてみると、値段のつく本から出る利益のぶんでカバーしているということになります。

一方、メルカリのようないわゆるCtoCは、その在庫のリスクや人的なコストを、本人が自分で引き受けるサービスです。たしかに最終的に手にする金額は高いかもしれませんが、いつ売れるかわからない本をずっと保管し、売れたら探してやり取りして、梱包して発送するという一連を、すべて本人がやらなければなりません。いくら最終金額が高くても、実際のそのリスクやコストをお金に換算すると、割に合わなくなってしまうことも多いでしょう。

バリューブックスの「サスティナブル買取」は、その中間の、いわば「いいとこ取り」を狙ったサービスです。用意している事前査定のシステムを使って選別した、値段のつく本だけを送ってもらいます。値段のつけられない本を最初から送ってもらわないことで、それに関連してかさむ無駄なコストがかからなくなります。そのぶんを買取価格に反映させ、最大限高く買い取るということです。

 

 

内沼:
自分に合う方法を選んでもらえばいいということですよね。なるべく楽にという人は一括買取がいいし、なるべく高くという人はフリマアプリがいい。バリューブックスの場合は、一括買取と比べると選別するひと手間はかかるけれど、フリマアプリよりはずっと楽でリスクもない。選別してもらい、なるべく輸送や保管の無駄を減らすことで、古本の買取価格をなるべく高く、なるべくメルカリなどでの販売価格に近づけていこうということですよね。

そのぶん、事前の査定で値段のつかなかった本は、自分で処分してもらうことになってしまいますが、もちろん本の中身の価値と価格とは別のものですから、近しい誰かにあげたりなど、別の形で活用してもらうことができればよいですよね。

中村:
そういうことです。また、活用方法が見つからなくとも、ご自宅の近くの廃品回収に出せば、最終的にはきちんとリサイクルされます。仮にうちに送ってもらったとしても結局同じように古紙リサイクルに回すことになってしまうので、それならば自分で処分してもらうほうが、コストの面だけでなく環境にもやさしい。日本の紙のリサイクル率はとても高く、世界でもトップクラスといわれています。

 

 

内沼:
ありがとうございました。繰り返しになりますが、今回の件は第一歩。これから少しずつ未来の計画についても公表していきたいですし、最終的には「本好きの人たちがみんな使ってる」という状態にまでもっていきたいですね。

中村:
そうですね。まずはそこに向けて粛々と、サービスの開発を進めていきたいと思います。ぜひ長い目で応援してもらえればと思います!

posted by 飯田 光平

株式会社バリューブックス所属。編集者。神奈川県藤沢市生まれ。書店員をしたり、本のある空間をつくったり、本を編集したりしてきました。

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