音楽x本がテーマのフェス「ミュージションフェス2025」開催!|ブックバス出店します
2024-11-26
2020-08-27
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なんとも刺激的なタイトルです。文化人類学者・奥野克巳が訪ねたのはボルネオの狩猟採集民、プナン。彼らの日々の暮らしは、僕たちをとことん困惑させます。
題の通り、プナン語には反省にあたる言葉が見当たらず、感謝が示されることもほとんどない。さらには、「貸し借り」の概念さえもないというから驚きです。
他人の所有物を勝手に使い、あまつさえそれを別の村人へと渡してしまう。食時の会計は、その時に現金を持っている人が奢る。持つ者が持たざる物にシェアするのは当然の行為なのです。
所有欲を否定する彼らの振る舞いは、まるで未開の地に”本来の人間の在り方”が保存されているかのよう。しかし、むしろ所有を欲する僕らの方が本能的で、プナンの暮らしはある種の先進的なシェアリングエコノミーだと続くのがまた面白い。
「なぜ彼らには『ない』のだろう」という問いは、そのまま「なぜ僕らには『ある』のだろう」というこだまとなって返ってきます。プナンを知れば知るほどに、自分たちの足元がぐらぐらと不安定になる。でも、これこそが読書の醍醐味のひとつですね。
熱帯の木々を分け入り、分け入り、果たして僕らの目には何が映るのか? プナンは森で、静かに僕らを待っています。
人間はどうして悩むのか。それは、未来を想像してしまうからだ。ならば、ヤギになってしまおう。
そんな華麗(?)な論理のステップを踏み、ひとりのデザイナーが人間から抜け出しました。シャーマンに教えを乞い、人工装具で四足歩行を実現し、草の消化システムまでつくり上げてしまう。
アルプスの山あいで人類とヤギが結実する瞬間、それは笑えるほど美しいのでした。
posted by 飯田 光平
株式会社バリューブックス所属。編集者。神奈川県藤沢市生まれ。書店員をしたり、本のある空間をつくったり、本を編集したりしてきました。
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