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2024-12-16
2020-08-18
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アンソニー・ボーデインが書き殴る文章は、強烈な胃もたれを引き起こします。
多種多様な比喩、過剰な言い回し、辛辣な悪態。ああ、矢継ぎ早に口の中に放り込まれる濃厚な情報量よ! でも、胸焼けもなんのその、僕はすっかり彼の熱っぽい言葉に病みつきになってしまったようです。
前作『キッチン・コンフィデンシャル』で狂騒に満ちた料理界の内幕を語り尽くしたアンソニー。次の舞台は、世界でした。
「究極の食事」を求め、ポルトガルでは豚の解体現場に立ち会い、羊の丸焼きを食すためラクダで闇夜の砂漠を行軍し、ウォトカで火照った体を寒空の下で冷やす。
その食指は地球の裏側では飽き足らず、自身の過去にまで伸びてゆくから面白い。弟とふたり、家族との想い出の地を巡るアンソニー。”甘い記憶が料理をいっそう美味にするはず”。しかし、そんな目論見を叶えるほど時の流れは彼に優しくないのだけれど。
この旅に、美食紀行なんて優雅な響きは似合いません。直視しがたい現実を、脂汗たらして死に物狂いで喰らっていく。さぁ、彼の終着点はいずこに?秋の夜長、オフロードの食の旅路に付き添ってみてはいかがでしょう。
前号にて、壇ふみの父としてさらりと紹介した檀一雄。今度は、料理人として登場してもらいましょう。
料理なるものを恐れる人にこそ、手にとって欲しい本書。檀先生は、分量や手順の正確さにとらわれる僕らを「適当でよい」と優しく突き放してくれます。大胆に包丁を振るい、時折の味見で調整しながらパッパッパと出来上がる計92種の料理。食欲ならぬ、料理欲が心地よく刺激される一冊です。
posted by 飯田 光平
株式会社バリューブックス所属。編集者。神奈川県藤沢市生まれ。書店員をしたり、本のある空間をつくったり、本を編集したりしてきました。
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