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2020-07-21

納品書のウラ書き vol.3 「宇宙を手元にたぐり寄せてくれた、加古さんの仕事。」

 

バリューブックスの本を購入していただいたお客様にお届けしている「本の納品書」
その裏面に掲載している編集者・飯田による書評「納品書のウラ書き」のバックナンバーを公開します。
納品書のウラ書きにまつわる詳しいストーリーはこちらをご覧ください。

 

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2018年7月発行_vol.3 より

 

宇宙を手元にたぐり寄せてくれた、加古さんの仕事。

 

夏らしい暑さが増すにつれ、夜の涼しさが心地よくなってきました。ぶらりと家を出て、満天の星空を味わう。上田での、密やかな愉しみのひとつです。

加古里子が40年前に刊行した絵本、『宇宙』。控えめな表紙です。が、表紙をめくれば、ページの隅々にまで注がれた彼の熱量を指先から感じ取れるはず。

本書は、小さなノミのジャンプから始まります。鳥たちの羽ばたきを学ぶ、進化する飛行機の歴史に感心するうちに、気がつけばロケットは成層圏を抜け宇宙へ。でも、旅はこれから。150億光年の宇宙の果てまで、加古さんは僕たちを案内してくれます。

子供のために、と世界の仕組みをやわらかく噛み砕き、子供だから、なんて理由で手は抜かない。解説に書かれた苦心の制作過程を見れば、彼が子供たちに真剣勝負を挑んでいたことがよく分かります。

先の5月、一足先にふわりと旅立っていった加古さん。とても残念で、悲しいけれど、あなたが残した誠実な手仕事を抱きしめて見送りますね。

 

『宇宙 (福音館の科学シリーズ)』
加古 里子(著、イラスト)
出版社:福音館書店(1978年11月15日)

 

 

 

合わせて読みたい1冊

 

 

七夕しかり、7月はついつい夜空を見上げたくなります。夜空にまつわる言葉と、それを表す優美な写真で構成された本書。

まずは「夏の星の章」を、と開いてみれば、一対の星々が生み出す”天井の宝石”、織姫と彦星の子供に見立てた”七夕の子ども”など、詩的な星たちの物語が並びます。星の辞典、と呼ぶには美しすぎるかも知れませんね。

 

『宙の名前』
林 完次 (著)
出版社::角川書店(新訂版 2010年7月1日)

 

 

 

 

 

 

posted by 飯田 光平

株式会社バリューブックス所属。編集者。神奈川県藤沢市生まれ。書店員をしたり、本のある空間をつくったり、本を編集したりしてきました。

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