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2020-07-06

納品書のウラ書き vol.1「世界をもう一度、味わいなおす」

 

バリューブックスの本を購入していただいたお客様にお届けしている「本の納品書」
その裏面に掲載している編集者・飯田による書評「納品書のウラ書き」のバックナンバーを公開します。
納品書のウラ書きにまつわる詳しいストーリーはこちらをご覧ください。

 

——

 

2018年5月発行_vol.1 より

 

 

世界をもう一度、味わいなおす

 

心地よい空気と風に誘われて、ふらりとお散歩に出かけたくなる季節となりました。本書は、そんな時のお供におすすめ。

『三びきのやぎのがらがらどん』でも知られる絵本作家、マーシャ・ブラウンの残した写真絵本です。もともとは3冊で構成されていたのですが、30年ぶりに復刊、持ち歩きやすいコンパクトな1冊に再編集されました。

物事を知るにつれ、私たちは固定したまなざしで世界を捉えがちになります。花をその名前で呼び、動物たちのしなやかな造形への興味を失う。

しかし、マーシャはそれを良しとしません。

雨上がりのくもの巣がつくるダイアモンドの天井、ぬらした指で感じる空気の手触り。この世界に散りばめられたものたちの”そのままの美しさ”の受け取り方を、彼女はやわらかくのびのびとした言葉で紡いでいきます。

「さわることは せかいを かんじること。さわることは せかいが かんじること」。

まじまじと自然を見つめるその視線は、どこか懐かしい。そうだ、子供のころには私たちだって、同じように世界のありさまに驚いていたはずでしたね。

 

『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』
マーシャ・ブラウン(文と写真)
谷川俊太郎 (翻訳)
出版社:港の人 (2011年8月10日)

 

 

 

合わせて読みたい1冊

 

 

『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』の翻訳を務めたのは、日本において職業としての”詩人”を確立させた谷川俊太郎。詩集ももちろんよいけれど、彼の来歴に触れるには本書がうってつけです。

聞き手の尾崎真理子が時に豪快に、また繊細に、迫真のインタビューで彼に迫る。己自身を語る詩人の言葉、ぞくぞくさせられます。

 

『詩人なんて呼ばれて』
谷川 俊太郎(語り手・詩)
尾崎 真理子(聞き手・文)
出版社::新潮社 (2017年10月31日)

 

 

 

 

posted by 飯田 光平

株式会社バリューブックス所属。編集者。神奈川県藤沢市生まれ。書店員をしたり、本のある空間をつくったり、本を編集したりしてきました。

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