2025-10-23

【ほろ酔いで語る「本の話」】第一回 仕事おわりのセッション

 

2025年10月10日に発売のバリューブックスオリジナルビール第二弾「BOOK SESSION IPA」発売を記念して、三回に渡ってほろ酔い企画をスタート!

第一回は、バリューブックスの東京オフィスが入居する「HOME/WORK VILLAGE(ホームワークビレッジ)」にて、仕事おわりのセッション。

今回参加するのは、本屋「とつとつと  小さな声とあわいの本」のマネージャー・岡本さん。シェアオフィスを運営する「MIDORI.so」のCO(コミュニティオーガナイザー)増田さんと、おなじくCOの熊倉さん。そして「BOOK SESSION IPA」開発担当であるバリューブックスの神谷。それぞれ別の仕事をしながら同じ施設内で働く4人が、ビールを片手に好きな本を語ります。

 

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左から神谷(バリューブックス)、熊倉さん(MIDORI.so)、岡本さん(とつとつと)、増田さん(MIDORI.so)

 

本を語り合うひとときに寄り添うビール

 

神谷:みなさん、おつかれさまです。まずは乾杯!

全員:乾杯〜!

岡本:おいしい!IPAって苦いイメージだけど、これ飲みやすいですね。

神谷:まさに IPA の中でも「SESSEION IPA」というスタイルは、飲みやすいのが特徴なんです!第一弾ではひとり読書のお供になるように作ったんですけど、第二弾では、「集まること(SESSION)」をテーマにしています。

熊倉:ラベルに描かれた人も、一人から三人に増えてる!

 

神谷:そうなんです!ひとつの本をテーマに話す読書会だったり、今日みたいに好きな本について話す場に寄り添うビールになればと「BOOK SESSION IPA」という名前をつけました。

増田:度数が高めでガツンとくる前回のIPAより、新作の方はちょっと落ち着いた大人な味わいかも。

 

 

神谷:おしゃべりしながらゆっくり味わえるように、前回からアルコール度数も6.0%から4.5%に下げているので、軽くて飲みやすい仕上がりなんです。香りもアプリコットとか、どちらかというと紅茶のようなイメージ。温度が変化するほど味わいのうつろいを感じられるようにつくりました。

熊倉:普段はあんまりアルコールは飲まないんですけど、「本と一緒に」というシチュエーションがあると、飲む理由にもなってうれしい。でも、そもそもなんでビールを出そうと思ったの?ワインでもいいわけじゃん。

 

 

神谷:自分がビールが好きだからというのが大前提なんですけど(笑)たとえばワインって、ボトルを開けて飲み切らなきゃいけないハードルがあるじゃないですか。でもビールなら、仕事終わりに1本だけ開けて、本を読みながらゆっくり飲める。そんな時間をもっと豊かにしたくて作りました。

 

 

熊倉:その提案はすごくいいね!

岡本:「とつとつと」では、第一弾の「BOOK IPA」から置かせてもらっています。お客さんのなかには、「バリューブックスがプロデュースしてる本屋」と知って来てくれる人も多いので、ビールも人気ですよ。私自身「BOOK IPA」のファンで、読書で現実世界からちょっと逃避したい時に、邪魔にならない華やかなおいしさが、「本に合う」というテーマにすごくぴったりだと思いました。

 

 

神谷:本当に!?それはうれしい。

岡本:バリューブックスがつくるビールだから、飲んでみようとか。この場所の魅力をつくっているひとつになっていると思います。

 

 

本屋を入り口に、「村」のような場所でつながる

 

神谷:そうそう、今話してくれたように「とつとつと」はバリューブックスとTakramの共同プロデュースの本屋なんです。ここ「HOME/WORK VILLAGE」の入り口にある「案内所」の役割も果たしてくれているんですよね。

 

 

岡本:そうですね。複合施設の入り口にあるので、本屋を目的に来る人ばかりじゃないんです。通りすがりの人や、別の用事で来た人もふらっと立ち寄る。いろんな出会いが生まれるし、いろんな声をきける場所だなと思っていて。ここを起点に、みんながそれぞれの目的地に向かっていく。だから私は“店長”というより、“この場所のマネージャー”という感覚かな。

神谷:お客さんにとってもだけど、働くぼくたちにとっても「HOME/WORK VILLAGE」って魅力的な場所ですよね。施設の案内所として入り口に「とつとつと」があって、コワーキングスペースの「MIDORI.so」を起点に今回みたいな交流も生まれている。

 

 

熊倉:まさに村のような場所だよね!屋上に畑があるから、都会の真ん中にいながら季節を感じられたり、自然とおすそわけが生まれる、本当に村のような存在。

増田:放課後になると、隣の池尻小学校から常連がくるんですよね。

岡本:そう!本がある場所に自然に集まる。

 

 

熊倉:大人が働くすぐ隣に、子供たちが日常的にいる風景ってすごく新鮮。ピースフルな拠点だと思う。

神谷:ふたりのような「MIDORI.so」のCOが、利用者同士をつないでくれることもあって、今だとこうやって飲んでるし、ゆるい同僚がふえた感覚がある。

 

 

岡本:本屋があって、カフェやレストランもあって、シェアオフィスもある。逃げ場がたくさんあるのがうれしい。

神谷:同じ会社のなかだけで閉じこもってたらしんどくなるときあるけど、息抜きしたい、安心できる場所をたくさん持てるのはすごく働きやすいですよね。

岡本:本を介してコミュニケーションをとれるのもすごくよくて。お客さんだったり、「HOME/WORK VILLAGE」で働く仲間が、「とつとつと」に寄ってくれると、「こういう本を買うんだ」「こういうことに興味あるんだ」という発見がうれしい。言葉を交わさなくても、その人の考えていることが、選ぶ本にも表れている気がする。

神谷:まさに今日はそんな本の話をしたくて。前置きが長くなりましたが、みなさんの好きな本を教えてください!

 

 

ほろ酔いで語る「本の話」

 

熊倉:わたしが持ってきたのは、友達にすすめられた女優・中谷美紀のエッセイ『女心と秋の空』と、伊丹十三の『女たちよ!』。あとは、まだ冒頭しか読んでない柚木麻子さんの『BUTTER』。どれも社内のスタッフがおすすめしてくれた本です。

 

 

神谷:ふだんからけっこう本は読むんですか?

熊倉:いや、本を読むのは10年ぶり(笑)子供を産んでからそういう時間を持てていなくて、どうせ読まないとわかってるから買うことすらできなかった。最近やっと「読めるかも」と思ったの。

神谷:10年ぶり!なんで読めるかもと思ったんですか?

熊倉:実はこの仕事に転職してまだ5ヶ月で、楽しいけど忙しすぎて、脳みそがぱんぱんで、音楽もpodcastも聴けなくなった。耳から入る情報より、目に見えてページが進んで、必要な時にやめられる方が今なら楽かもと思って。

岡本:ふだんの仕事が「他人とコミュニケーションをとること」だから、ひとりで何かに没入する時間があるほうがバランスとりやすいのかもしれないですね。

熊倉:寝る前に4ページだけでも、読書の時間を持つようにしたんです。またちゃんと読み終えられたら感想共有します!

 

 

神谷:増田さんはどんな本を持ってきてくれたんですか?

増田:本が大好きで、紹介したいものがいっぱいあるんですけど、まず一冊目が『inTArest magazine. 0号』という去年創刊された雑誌。「はみ出したものたちの避難所」というのをテーマに、長崎県の西海にある「すみれ舎」という障害者施設を取材したもの。この施設の運営者がすごくパンクでいいんですよね。

 

 

岡本:知らなかった、おもしろそう!

増田:MIDORI.so」もはみ出し者たちが集まっている場所なので、すごく共感して。音楽のジャンルのひとつとしてだけじゃなくて、暮らしや働きかたを自分でつくることを「パンク」だと表しているんですよね。人は徹底して個であるというテーマが書かれているラッパーのECDの自伝『他人の始まり因果の終わり』も、そういった意味で昔からすごく好きな一冊です。

 

 

神谷:パンクなテーマを読みながら、飲むビール。めっちゃいい時間ですね。次は「PUNK IPA」つくろうかな(笑)

増田:いいですね!あとは、物理学者の佐治晴夫さんの『この星で生きる理由』もお気に入りです。

神谷:気になる見出しが多いですね、「なぜ口は顔の真ん中にないのでしょう?」「人はなぜ旅をするのか?」

増田:あとは「血縁関係の記憶は三代で消える」という話もすごくおもしろかった。悩みや疑問に宇宙視点で答えていて想像力が広がるし、これもまたパンクな一冊です。

 

 

神谷:僕は人生相談本を三冊持ってきました。どのページから読んでもいい気軽さがいいです。

熊倉:人生相談おもしろいよね〜

神谷:一冊目はジェーン・スーさんのTBSの番組の「相談は踊る」のコーナーをまとめたもの。

熊倉:ラジオはめっちゃハマってます。

神谷:おもしろいですよね!二冊目は中島らもさんの本で、新聞のコーナーをまとめたもの。どちらかというとコメディ色が強いかも。最後の岡田斗司夫さんの本は、相談を受けた時にどんなアドバイスができるか、これを読めば人生相談への答え方がわかるというものです。

 

 

神谷:「浮気をして本当に恋に落ちてしまって、心と体の区別がつきません」とか、よくある相談も、どう聞き手の人が返していくか。大喜利要素がある。それこそ飲みながら読んでいるので、酔いが回ってくると、どんどん感情移入してくる……。

岡本:聞き手のいろんなスタイルがあるのがいいですよね。

増田:私は最近、佐伯ポインティさんにハマってます(笑)

神谷:ポイちゃんいいですよね、ポジティブになれる。では最後は岡本さん!

 

 

岡本:共通のテーマの三冊を持ってきました。一冊目は「rn press」という独立系出版社が出している文芸誌『USO.』の第6弾。この時のテーマが「我儘(わがまま)」で、なまさんと少年アヤさんの交換日記がすごいおもしろくて。親友だけど、ふたりともめっちゃ口悪いんですよ。まさにひとりで飲んでても、友達の輪に入ったような笑える交換日記なので、「BOOK SESSION IPA」に合いそうだなと。

神谷:ビールに合うものをちゃんと選んできてくれてありがとうございます……!往復書簡いいよね〜

岡本:なんで魅力的なんですかね。

神谷:会話みたいな瞬間的なラリーじゃなくて、相手の言葉を噛み砕いて、自分もまた大事な言葉を残そうするやりとりがいいのかな。

岡本:そう、やりとりする本人たちは、言葉を受け取り合うことに充実感があるけど、それを読んでいる私まで不思議と楽しいんですよね。他人の個人的な話に、なぜ惹きつけられるのか。

熊倉:podcastも個人的な話が多いよね。

 

 

岡本:そう!仲間内のpodcastも、おもしろいものと、興味が持てないものがあって、その違いをうまく言語化できない……。

(答えは出ず)

岡本:二冊目は『USO.』を編集している野口理恵さんの著書で『生きる力が湧いてくる』。家族のほとんどを早くに亡くしていて、「壮絶」とも言える人生を送っているんだけど、このタイトルに回収される内容がよくて。

 

 

神谷:タイトルと素敵な装丁見ただけで惹かれる一冊!

岡本:最後は去年からずっと推している『わたくしがYES』。一冊目の『USO.』で交換日記を書いていた、少年アヤさんというエッセイストがはじめて本名で出した本で、力強い命の覚悟を見る、すごい元気づけられる一冊です。心のなかにいるうさぎちゃん(イマジナリーフレンド)としゃべりながら話が進んでいくところや、作者がノンバイナリーとしてのアイデンティティの気づきを語る冒頭も最高なんです。もう、読まないとわかんない。読んでほしい!笑

 

 

神谷:読みます!やっぱおもしろいですね、こうして好きな本の話をきくのは。

岡本:選ぶ本にその人の考え方とかも表れますよね。

熊倉:ここまで人の好きなことの話を聞くことって意外とないよね。これは続けていったほうがいいんじゃない?

増田:酔っ払いながら、読んだり、書いたりもいいね。

神谷:たのしそう!「BOOK SESSION IPA」をお供に、またお願いします!

 

 

登場した本を購入する

 

「MIDORI.so」CO・熊倉さんセレクト

▶︎『BUTTER』著:柚木麻子

▶︎『女たちよ!』著:伊丹十三

▶︎『女心と秋の空』著:中谷美紀

 

「MIDORI.so」CO・増田さんセレクト

▶︎『inTArest magazine. 0号』編集:interest magazine 編集部

▶︎『他人の始まり 因果の終わり』著:ECD

▶︎『この星で生きる理由』著:佐治晴夫

 

バリューブックス・神谷 セレクト

▶︎『ジェーン・スー 相談は踊る』著:ジェーン・スー

▶︎『特選 明るい悩み相談室 その2 ニッポン常識篇』著:中島らも

▶︎『オタクの息子に悩んでます』著:岡田斗司夫

 

「とつとつと  小さな声とあわいの本」マネージャー・岡本さんセレクト

▶︎『USO. VOL.6』編:rn press

▶︎『生きる力が湧いてくる』著:野口理恵

▶︎『わたくしがYES』著:松橋裕一郎

 

 

 

撮影:田川葉子

協力:MIDORI.so

posted by 北村 有沙

石川県生まれ。都内の出版社勤務を経て、2018年にバリューブックス入社。旅、食、暮らしにまつわるあれこれを考えるのが好きです。趣味はお酒とラジオ。保護猫2匹と暮らしています。

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