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2025-08-07

#BooksForNature|読み終えた本で、自然を支える vol.1― NPO法人グリーンウッド自然体験教育センターインタビュー

 

この夏、バリューブックスでは「本」と「自然」をつなぐキャンペーンをはじめます。

バリューブックスの姉妹サイトであり、本の買取を通じて、寄付ができる仕組み「チャリボン」をご存じですか?

「チャリボン」では、本の買取金額を社会課題に取り組む、NPO等の団体へ寄付することができます。

 

今回は、自然にまつわる分野で活動する4つの団体をピックアップし、それぞれの取り組みをご紹介します。

あなたの読み終えた一冊が、自然保護に取り組む団体の力になります。

本棚に眠る一冊が、自然を守る力になるとしたら──。

そんな思いでお届けするのが、#BOOKS FOR NATURE

自然と触れ合うことが増える夏、「本を送る」ことで支援が届く先のひとつ、「NPO法人グリーンウッド自然体験教育センター」を訪ねてみました。

 


 

「NPO法人グリーンウッド自然体験教育センター」とは

 

バリューブックスのある上田市から、車で2時間半ほど。

濃い緑に包まれた山を、くねくねと登って登って、ようやくたどり着いたのは、長野県下伊那郡泰阜村にある、「NPO法人グリーンウッド自然体験教育センター」。

ここは自然の中での暮らしを通じて学ぶ「山村留学」やキャンプを行う団体。

今回のチャリボンキャンペーンでは、子ども・若者の育成事業を支えるために本の寄付が活用されます。

 

※取材日:2025年7月2日/場所:泰阜村の現地施設にて

 

お話を伺ったのは、代表理事の齋藤さん。

実際の現場の活動や、どのようにチャリボンの寄付が活かされているのかを伺いました。

 

「やったらできた」を積み重ねる暮らしの教育

 

グリーンウッドの活動は、子どもたちの「もっとやってみたい」という声から始まりました。

時は40年前にさかのぼり、2泊3日のキャンプを経て「もっと長くいたい」と願った子どもたちが、1週間、1か月、ついには「1年間キャンプがしたい!」

―その願いに大人たちが応えたことから、現在の「暮らしの学校だいだらぼっち」という山村留学の形が生まれました。

自分たちで火を起こし、畑を耕し、ご飯をつくり、ルールを決めて暮らす。子どもたちはこの共同生活のなかで、「やったらできた!」という小さな成功体験を何度も積み重ね、自分を信じる力を育てていきます。

 

こどもたちは親元を離れ、1年間ここで仲間たちと寝食を共にします。

 

暮らしのなかでマッチで火をつけるのも「できた」を伸ばします。

 

1か月何をするか、何をしたいか、スケジュールも自分たちで決めます。

 

子どもたち手作りの小鉢。割れても金継ぎをして大事に使います。

 

大事にしているのは、子どもが自ら「やりたい!」と決めて参加すること。持ってきてはいけないものは「親の期待」とおっしゃっていたのが印象的でした。

 

グリーンウッドでは、子どもから大人まで、さまざまな年代に向けた活動をしています。

・暮らしの学校だいだらぼっち

1年間の暮らしの全てを自分たちで考える山村留学事業

 

 ・信州こども山賊キャンプ

毎年700人超のこどもたちが集まる「こどもが主役」のフリーキャンプ

 

 ・森のようちえん まめぼっち

「どの子もうちの子、どの子もよその子」の距離感で、参加者みんなで遊びの場を創る野外保育活動

 

 ・青年教育

キャンプボランティア、インターンなど、実体験と仲間との協働から学びを得る場を提供

 

 ・視察・研修・講師派遣

「地域が人を育て」、「教育が地域を育てる」その実践を全国へ伝える

 

人間関係が希薄になってきている現代社会。

自然の中で自分が出来ること・出来ないことを持ち寄り、認めあい、助け合って暮らすことで、自ら課題を乗り越える力(ねっこ)を育てる。

そんな「ねっこ教育」を軸に、体験活動を提供しています。

 

本が届くことで生まれる変化

 

「どうすればもっと多くの若者に体験の場を届けられるか」

 

全国から希望者が集まる長期滞在型プログラム「だいだらぼっち」。

安全に、質の良い体験を提供し続けていくためには、どうしても費用を上げざるを得ない現実があります。

参加している子どもの中には、塾や習い事、海外旅行などすでに様々な経験をしている子が少なくないそうです。

 

多くの子どもたちの「できた!」を増やしていくためにも、経済的に余力のない家庭には減免制度を設けるなどの努力は続けていますが、なにかが大きく変わるわけではない―。

そうしたことで体験格差が生じてしまうことに、ジレンマを感じると齋藤さんはいいます。

 

いかにしてこのジレンマを解消していくのか―。

その一つが「だいだらぼっち」とは別の事業として行っている、施設や団体との協働です。

児童養護施設の子どもたちや、若年ホームレスなどの課題に向き合う他のNPO団体が支援している若者たちを受け入れ、キャンプを実施しています。

料理が好きだけれど、誰かに食べてもらったことがないだとか、 「美味しいね」と言われることだとか、そういう実体験で自信が付いていく。

 

「だからこそ、チャリボンのような寄付が集まれば、もう少し参加しやすい仕組みも作れるかもしれない。そう思っています。」(齋藤さん)

 

さらにグリーンウッドでは、キャンプのボランティアをインターンや研修の機会としても開いています。

自然体験を支える若者たち自身も、子どもたちと暮らすなかで「できた!」を体感し、他者を思いやる気持ちを自然と育んでいきます。

 

「キャンプはとにかく安全第一。支える人が育たないと、活動の規模も質も保てない」(齋藤さん)

 

体験を受け取った若者が、やがて誰かに届ける側になる――。

グリーンウッドが力を注ぐ青年育成は、そんな“経験の循環”を生むための大切な基盤です。

そして、チャリボンで寄せられた一冊一冊が、こうした体験の現場を支えるためのかけがえのない資金源となっています。

 

宿舎の外には様々な夏野菜。本などから得た知識「知ってる」から実践して「できた」につながります。

 

グリーンウッド 齋藤さんからのメッセージ

 

「チャリボンで寄付していただいた本は、子どもたちが火を起こし、ご飯をつくり、自分で作った器で食べる。そんな体験の土台をつくる力になっています。

そしてもし、もう一歩踏み込んで関わってみたいと感じてくださった方がいれば

グリーンウッドでは、キャンプや暮らしの教育を支えるスタッフ・ボランティアを募集しています。」

 

 

本を手放したその先に、子どもたちの「できた!」が芽吹いています。

 

グリーンウッドが目指すのは、
「みんなが『できる』を持ち寄る社会」。

一人ひとりが、自分の関わる会社や学校、部活動といった“小さな社会”の中で、「自分にできること」を差し出し、それをもとに、より良い社会をともにつくっていく。

単に自然体験を提供するのではなく、

「暮らし」そのものを通じて、人としての根っこ―自分を信じる力、他者とともに生きる力を育む。

そんな教育を、これからも丁寧に続けていきます。

 

インタビューを終えて

 

「やってみよう」「やってみた」「できた」そんな経験が子どもを育てる。

頭ではわかっていたけれど、こうしてお話を聞いて、子どもたちが暮らしの中でそれを学び実践している姿が随所に見えて、改めて「経験を積む」ことの大切さを実感しました。

実は私自身、今回のキャンペーンで初めて寄付事業に関わったのですが、まさに「知っているけど経験はない」状態。それでも「やってみよう」と思い、こうしてインタビューに伺いました。だからこそ自分事のように身に沁みたのだと思います。

小さなことでも「やってみよう」と第一歩を踏み出すことが今の状況を少しでも変えられる。それは寄付も同じなんだなと今回の経験で感じることができました。(篠原)

 

▼NPO法人グリーンウッド自然体験教育センターへ「本で支援する」

https://www.charibon.jp/partner/greenwood/

 

BooksForNature ― 読み終えた本で、自然を支える

「自然の中で暮らすことで子どもたちを育てる」

あなたの一冊が、そうした未来の芽を育てる力強い一歩になります。

posted by 篠原 有加

上田市出身。3児の母。
好きなものはマンガとお酒です。

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