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2022-04-27

納品書のウラ書き vol44 世界は僕らのさんぽを待っている

バリューブックスの本を購入していただいたお客様にお届けしている「本の納品書」
その裏面に掲載している書評「納品書のウラ書き」のバックナンバーを公開します。
納品書のウラ書きにまつわる詳しいストーリーはこちらをご覧ください。

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旅先では、なるべく車を使わず、自転車や徒歩で街並みを味わうようにしています。僕にはちょっと、車は速すぎるのです。こんなところに素敵なお店が、あそこに咲いている花はなんだろう、そこの路地裏に入ってみよう。速度は遅くとも、じっくり街の輪郭をなぞるのが好きなんです。そして、それは旅に限った話ではなくて。近所の変哲のない道だって、昨日・今日・明日で小さく(本当は大きく)変わっているのだから。暖かな陽気が増してきたのにあわせ、今回は”さんぽ本”を3冊ご用意。本の扉を開き、今日は気ままなさんぽに出かけましょうか。

 

『歩くひと  

谷口 ジロー著(小学館)

 

 

『孤独のグルメ』や『神々の山嶺』など、類い稀な筆致で名作漫画を世に送り出してきた谷口ジロー。完全版として再び世に出た『歩くひと』を読み、谷口ジローの真骨頂は「歩くこと」に詰まっていると再認識させられました。家の近所の小山に登るだけ、犬の散歩をするだけ、夏の盛りによしずを買って帰るだけ。セリフも省略されたその”だけ”の連続に、なぜか胸の奥から名前のつけられない感情が込み上げ、ため息がこぼれてしまう。自分の人生を愛でること。この漫画を丁寧にめくること。きっとそれは同じ行為なのだと、読了後に頷きました。

 

 

『ひとり歩き』 

マイク・モラスキー著(幻戯書房)

 

 

アメリカ出身、日本在住の大学教授、マイク・モラスキーが世界を歩き回ったエッセイ集。旅先での会話が増え、体調や気分で予定を変えながら旅できるのが「ひとり歩き」のメリットだ。冒頭で語られる言葉に、同じくひとり歩き Lover の僕も賛成票を投じます。彼の旅先は世界に限らず、根を下ろす日本にも及んでいく。通天閣の将棋クラブで一局指し、高尾山の下山後に温泉に入り、その後は一杯やりに赤羽へ。日本に溶け込みながらも、時おり異文化からのまなざしが顔をのぞかせるのが面白い。ひとり歩きのおすそ分け、ありがたく楽しませてもらいましょう。

 

 

 

『ゲームさんぽ 専門家と歩くゲームの世界   

いいだ、なむ著(白夜書房)

 

さんぽの妙味を現実世界にとどめておくなんて、もったいない!YouTube 番組「ゲームさんぽ」をひとたび見れば、きっとあなたもそう思うはず。気象予報士に「ゼルダ」の世界の雲や風の動きを解説してもらったり、建築史家にゲーム内の建築物や景観を分析してもらったり。ゲームの攻略を傍に置き、専門家と一緒に仮想世界の細かなつくり込みを調べ、驚き、学んでいくのは、なんて贅沢な時間なのだろう。本書は番組内容をただまとめるのではなく、各専門家と軌跡を振り返りながら発展させた一冊。現実と仮想の境界線を歩く喜びが、ギュッと詰まっています。

posted by バリューブックス 編集部

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