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2020-12-02

「日本にも難民はいる」LUSHが取り組む、本を通じた新たな支援のかたち。

(写真提供:株式会社ラッシュジャパン)

 

「難民」それはだれもが一度は耳にしたことがある言葉だと思います。

 

でも、どこか遠い国のできごと、自分たちの生活には関係のないこと、そう思っている人は少なくないのではないでしょうか。

 

「日本にも難民はいる」

 

ナチュラルコスメブランドLUSH(ラッシュ)では、そんなメッセージとともに、日本にいる難民が直面する厳しい現状をひとりでも多くの人に知っていただきたいと、取り組んでいます。

 

2016年より、チャリティ商品や寄付を通じて難民支援をおこなってきたLUSHですが、昨年から新たな支援のかたちとして、「本による寄付」をスタートしました。全国の店舗で古本の回収を行い、バリューブックスの「チャリボン」サービスを通じて、集まった本の買取額を「認定NPO法人 難民支援協会」に寄付しています。

 

昨年、2週間で約2300冊もの本が集まったこのキャンペーンを、今年も11月19日(木)から12月10日(木)までの期間、全国約50店舗および、製造工場などを含めた4拠点にて実施中です。(実施店舗の詳細はこちら

 

なぜ、コスメブランドが「難民支援」を訴え続けるのか。

そもそも、難民とはどういう背景を持つ人たちなのか。

古本寄付でできることは何なのか。

 

ラッシュジャパンの小山大作さんと、難民支援協会の藤代美香さんに、今回の取り組みに到るまでの経緯について、そして、身近にいる「難民」について、お話をうかがいました。

 

 

「気づき」のきっかけをつくる

 

人と動物に優しいスキンケアや、ヘアケア製品、バスアイテムを販売するLUSH。世界49ヶ国、900店舗以上を展開する大手コスメブランドは、創立者であるコンスタンティン夫妻の自宅のキッチンで、新鮮な原材料を使ってハンドメイドされた化粧品を作り始めたことをきっかけに生まれました。1995年にイギリス・ドーセット州プールに一号店をオープンしてから、現在にいたるまで、動物実験をおこなわず、環境や人権に考慮した、ハンドメイドのものづくりを続けています。

 

「わたしたちにとって、お店は“最大のメディア”なんです

 

と、小山さんは話します。

 

(写真提供:株式会社ラッシュジャパン)

 

「LUSHでは、創立者がそうであったように、わたしたちは、スタッフひとりひとりが社会に対する意見を持ち、それを言葉や商品を通じて、発信していくことを大切にしています。社会に埋もれてしまいそうな声なき声も、全国の店舗をハブに発信していくことで、多くの人に伝える手助けとなり、社会に変化を生むことができると信じています

 

LUSHが大切にするのは、強制するのではなく、“考えるきっかけ”をつくることだといいます。

チャリティキャンペーンを行う際は、ポスターの掲示やリーフレットを配布をするだけではなく、スタッフがお客さんと直接コミュニケーションをとりながら、発信するテーマの説明をおこなっているそう。

 

「ショップのスタッフは、開催するチャリティについて自分の言葉でお客さんに説明するようにしています。たとえ知識がないことでも、積極的に勉強し、自らがメディアとなって、接客のなかでお伝えしています

人生をかけて、社会問題と向き合っている人たちに、企業としていかにサポートできるかが、わたしたちの役割です。そして、難民支援協会もそのひとつです。2016年からコラボレートし、チャリティ商品の販売や寄付を続けています」

 

2017年チャリティ商品「Refugees Welcome」(写真提供:株式会社ラッシュジャパン)

 

 

「難民」と認めてもらえない国で

 

日本の難民認定数は、先進国で最低レベルです。

 

難民とは、紛争や人権侵害で、故郷から逃れてきた人々のこと。日本で難民の申請をしたのは、2019年で10,375人。一方、同年に政府が「難民」と認定し、在留を許可したのはわずか44人政府から難民認定・不認定の結果をもらうまでに、平均して3年、長い場合で10年もかかってしまいます。厳しい条件をクリアしたとしても、長期間不安定な状況に置かれるのです。

 

「故郷を追われ、すべてを手放し、それでも生きていくため、ようやくたどり着いた先で、再び壁に突き当たってしまう。それが日本にいる難民たちの現実です」と、難民支援協会の藤代さんは話します。

 

「仕事も家もなく、孤独で不安な日々を送る難民たちが大勢います。なかには、認定を待つ間、所持金を使い切ってしまい、ホームレス状態に陥ってしまう方も。

難民支援協会が目指すのは、“難民が新たな土地で安心して暮らせるように支え、ともに生きられる社会を実現する”こと。日本に逃れてきた難民が保護されるために、 難民ひとりひとりの来日直後から自立に至るまでの道のりに寄り添っています」

 

(写真提供:認定NPO法人 難民支援協会)

 

一言に「難民」と言っても、その事情や背景はさまざまです。

 

難民となる前は、わたしたちと同じように、仕事があり、家族があり、大切な人たちとのかげがえのない日常がありました。

 

こちらは、LUSHで制作されたインタビュー動画。日本で暮らす難民のひとり、ジュディさんのお話をまとめたものです。

 

LUSH ラッシュ: 難民インタビュー「今、私が望むこと」ジュディ編

 

母国シリアを逃れ、日本へ来て8年。ジュディさんは人道的配慮により滞在は認められていますが、難民認定は受けられませんでした。

 

この動画で語られるのは、仕事に恵まれ家族とともに裕福に暮らしていた日常が一瞬で奪われてしまったこと、家族と離れて過ごした辛い日々のこと、そして、日本では難民として社会へなかなか受け入れられないこと。

 

日本で直面する厳しい現実を語るなか、内戦が続く自分の故郷を「どこよりも美しい場所」と話す姿に、思わずはっとさせられます。彼らは「望んで日本にきた」のではありません。生まれ育った故郷を大切に思いながらも、命を守るため、遠く離れた国へ逃れざるを得なかったのです。

 

日本に暮らす難民28人のポートレート写真展 (写真提供:認定NPO法人 難民支援協会)

 

 

過酷さを増す、コロナ禍における難民の生活

 

「難民たちの生活は、コロナ禍によってさらに過酷なものになっています」と藤代さんはいいます。

 

「モスクや教会で寝泊まりをしていた人々は、3密を避ける為に寝る場所を失い、やっと就職が決まった人もコロナで休業となり生活苦に陥っています。健康保険に入れない難民の方も多く、日頃から十分な医療を受けることができず、健康状態がよくない人もいます。そのような状態で、ひとたびコロナに感染すると、重症化する恐れ、命にかかわることにもなりかねません。

また、日本語がわからず、孤立状態の難民は、情報が得づらい状態に陥っています。すでに学校の一斉休校が始まっていた頃、難民支援協会からのメールを受け取って初めて、コロナを知った人も少なくありませんでした

 

難民支援協会では、現在、27部屋のシェルターを用意。ホームレス状態のままでは感染リスクが増してしまうため、シェルターがいっぱいの時はホステル代なども提供し、なんとか住居を確保しています。

 

「難民への国内の支援は、まったく十分ではありません。そのような中、支援を求めている難民にとって難民支援協会が頼れる場所として存在し続けられるよう、感染対策を行いながら事務所を開いています」

 

 

本による寄付が、明日を生きる希望につながる

 

昨年までとは異なる理由で、今年は難民支援協会に相談に来る人が多くいます。日本で安心して暮らしていくためには、これまで以上に継続した食費や医療費、シェルターなどの生活への支援が必要です。

 

そこでLUSHでは、昨年からさらに実施店舗を拡大し、本による寄付を呼びかけています。本棚に眠っている古本のリサイクルが、難民たちへの支援につながります。

 

(写真提供:株式会社ラッシュジャパン)

 

本を寄付することは、具体的にどんな形で「難民」たちへの支援につながるのでしょうか。

 

たとえば、1冊50円で本が買い取れたとします。

 

本が60冊集まれば、家がない難民に一泊の宿を手配することができます。100冊集まれば、15食分の食事を提供することができます。200冊集まれば、一回分の通院費を支払うことができます。

 

一度失ってしまった日常を取り戻すことは簡単ではありません。しかし、ひとりの関心が、

ささやかな支援が、難民の明日を生きる希望につながります。

 

LUSHでの古本の回収は、世界人権の日である12月10日(木)まで。

実施店舗はこちら からご確認ください。

(遅れて実施する店舗もあるようです。お持ち込みしていただく場合は、事前にお近くの店舗にお問い合わせください)

 

(写真提供:株式会社ラッシュジャパン)

 

 

自宅からも参加できます

 

近くに店舗がない、この状況でなかなか店舗に出向きづらいという人もいるかと思います。

 

バリューブックスが運営するチャリボンでは、ウェブから本の集荷を申し込めます。

 

チャリボン ホームページ

 

支援先に「難民支援協会」を選択いただき、お送りする本をダンボールにつめてお待ちください。ご指定いただいた時間に、ご自宅まで集荷にうかがいます。ウェブからのお申し込みでは、本の明細と寄付額のご確認もいただけます。(2010年より前の本は、寄付の対象外となりますのでご遠慮ください)

 

誰もが「移動する自由」を

 

最近、LUSHが大切にする「信念」のなかに、あらたな思いが加わりました。

 

「私たちは、誰もが世界を自由に行き来し、その自由を楽しむべきであると信じています。」

 

LUSHでは、誰もが平等に幸せに暮らせる権利を、コスメを通じて訴えかけています。その権利はもちろん、日本で暮らす難民の人々の元にもあります。

 

一冊の本が、難民たちの自由を取り戻す、ちいさな一歩となります。

posted by 北村 有沙

石川県生まれ。上京後、雑誌の編集者として働く。取材をきっかけにバリューブックスに興味を持ち、あれよあれよと上田へ移住。好きなものはサウナとビール。

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