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2020-09-16

秋はやっぱりキノコで決まり!キノコって何?からキノコ育成まで「キノコ本」6冊

秋と言ったら味覚の秋、読書の秋、そしてキノコの秋!
見て楽しい、食べておいしい、読んで面白いキノコの世界に、この秋ちょっと足を踏み入れたくなる本6冊をご紹介します。

 

キノコを食べる

『キノコの魅力と不思議』小宮山勝司

 


長野県峰の原で、「ペンションきのこ」を経営し、キノコ鍋をはじめ、キノコの料理をペンションで出したりキノコ観察会も企画している小宮山さんが書いた本。ひとつひとつのキノコ紹介ページに書かれたエピソードは体験談か、キノコ仲間から聞いた話。毒キノコにあたったエピソードもひとつやふたつではなく、「食べた途端に壁の向こうまでゲロが飛んだ」「食べて5日後指先が死ぬほど痛む」なんてエピソードを読むと「こんなめに会いたくない・・!」と思いながらもついつい楽しく読んでしまいます。

食べられるキノコの場合は実際に調理したあとの写真が載っていることもあり、図鑑のように楽しむというよりも「キノコを見つけるところから食べるところまで」の楽しみ方をおすそわけしてもらう気持ちで読むのがおすすめです。

『キノコの魅力と不思議』

 

 

キノコを使う

『きのこレターブック』

 


ヨーロッパ、日本の生物学者たちによって描かれたキノコの図譜を中心に使用して作られたレターブック。便箋が全部で100枚、本のように綴られていて、100枚全てにありとあらゆるキノコが描かれているうえ、様々な紙質で作られているので見ているだけでも楽しい1冊。切り取ってちょっと飾ったり、プレゼントにひとこと添えたい時に使うのもよさそうです。まるで文房具のようですが、きちんと本として出版されています。

『きのこレターブック』

 

 

キノコを眺める

『南方熊楠 菌類図譜』

 


9歳から菌類の魅力に目覚め、粘菌をはじめ、きのこ(菌類)などの研究に生涯をささげた学者「南方熊楠(みなかたくまぐす)」が描いた図譜の一部をまとめた本。

全ての図譜には細字の英語がみっちりと書かれ、その全てはきのこの解説。1ページ1ページ、その図譜の精密さと萩原博光さんによる解説を読んでいくと次第に熊楠の狂気すら感じられてきますが、とにかく見応え、読み応えのある1冊です。

この本をきっかけに南方熊楠というひとが気になったなら、水木しげるが南方熊楠の人生を描いたマンガ『猫楠』もオススメです。

『南方熊楠 菌類図譜』

 

 

キノコを知る

『キノコの教え』小川眞

 


キノコキノコというけれど、そういえばキノコって一体なんなんだろう?なぜあの形?植物なの?なんでマツタケはシイタケみたいに栽培されないの?

そういうような、キノコの世界にグッと踏み込んでみたいかたにすすめたい本。

森の中でのキノコの役割や、世界のキノコ栽培事情、放射能とキノコの関係など、キノコがきっかけで見えてくる興味深いものごとがたくさん書かれています。

『キノコの教え』

 

 

 

キノコを育てる

『きのこリウムの世界』樋口和智

 


ついにキノコの世界はここまできました。こちらは、食べるためのキノコの栽培方法ではなく、愛でるためのキノコ栽培ノウハウを書いた本です。

読んでみると、用意するものは至って簡単そうで、「きのこリウム」に向くコケの解説、や「こんなときどうするの?」というQ&Aページまでサポートが行き届いています。きのこの菌床や種菌も1500円くらいで簡単に買えるようなので、この本さえあればわりと「えいっ!」と始められそうなキノコ栽培

「きのこリウム」が家にあったら、ジメジメした梅雨の時期も「キノコ栽培には良い環境だ・・」と思うことで楽しく過ごせそう。

『部屋で楽しむ きのこリウムの世界』

 

 

 

キノコを読む

『マルコの夢』栗田有起

 


「キノコなんですよ。すべてはキノコの計らいなのです。これまで何が起きたのか、今何をすべきか、これからどうなっていくのか、キノコは全部心得ています。われわれは皆、ひとつのキノコの傘の下で生きています」(本文より)

この小説は、幻のキノコ「マルコ」をめぐる物語。大学を出たが就職が決まらない主人公が、姉の紹介でパリの三つ星レストランから「キノコ室の管理」を頼まれるところから物語ははじまります。

レストランのキノコ室にある「乾燥マルコ」とその味のすばらしさを知り、どうやらそれが日本原産らしいことが発覚します。主人公は「マルコ」を手に入れるため日本に帰国し、驚くべき事実を知ることに・・!
リズミカルな文体がとても読みやすく、さらっと3時間くらいで読めちゃう1冊。最後に明かされる「マルコ」の描写はいちど読んだら忘れられない衝撃です。

『マルコの夢』

 

 

儚いキノコに思いを寄せて

 

見ても読んでも食べても楽しいキノコの魅力、本をきっかけに少しでも気になっていただけましたでしょうか。
今まで気にしたことがなかったのですが、キノコの寿命はだいたい1〜2週間程度だそうです。まるで桜の花のように儚く、まだまだ謎の多いキノコですが、それゆえに魅力は尽きることがなさそうです。

これからもきっと出版され続けるキノコ本。本屋さんで見かけたらぜひ手にとってみてください!

 

posted by 池上 幸恵

バリューブックスが運営する本屋「NABO」店長を経ていちど退職、その2軒となりの店舗「バリューブックス・ラボ」スタッフとして復活。
会社ではたらきつつ、自分で作った土偶の展示販売、イラストの仕事など受けて暮らしています。

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