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本に触れる。
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2020-08-18

障害を持った書店員たちとの挑戦。ビジネスと福祉を融合させる本屋「ててたりと」の毎日。

 

こんにちは、バリューブックス編集者の飯田です。

埼玉県川口市に、「ててたりと」という名前の本屋があります。一見、なんの変哲もないふつうの本屋なのですが、実はちょっとした秘密があって。

書店員全員が障害を持っている人たちで、本の仕入れ、陳列、接客、時には営業まで、そのすべてを彼ら自身が行っているんです。

「ててたりと」は本屋でもありつつ、「就労継続支援B型事業所」と呼ばれる、働く機会を提供する福祉事業所でもある。

 

そんな本屋、聞いたことがない!

 

バリューブックスでも、障害を持った人が働きやすい環境をつくろうと動いているチームがあります。自分たちが実現したいことのヒントが得られるかも知れない。そんな思いで、バリューブックスのスタッフと一緒に「ててたりと」に話を伺いにいきました。

(運よく、新型コロナウィルスが世の中を席巻する前に訪問できました)

 

障害を持った人が働く社会が「いい社会」なのか。

お客様目線を持ち続けるために、NPOではなく株式会社を立ち上げた。

「潰れたっていい」と「続けなければいけない」。2つの思いの共存。

 

代表の竹内さんから淡々と語られる言葉は、ゆっくりと僕たちの体に沈んでくる重みがありました。

 

「支援を受ける人」でもあり、「本を売る人」でもある。

 



PROFILE:竹内一起

街の本屋であり、障害者の作業所でもある、本屋「ててたりと」を運営するTETETARITO 株式会社の代表。複数の福祉施設に勤めた後、元同僚とともに2018年、TETETARITO 株式会社を立ち上げた。

 

飯田:
お店に入って、個性あふれるポップに目を引かれました。これは、利用者の方々がつくっているんですか?

竹内:
そうです。書きたい人が書いていて、それぞれの自由に任せています。

 

 

 

飯田:
書き手の特徴やキャラクター性が伝わってきて、ながめるだけでも面白いです。これ自体を売ったっていいぐらい。

竹内:
ありがたいことに、「ポップが欲しい」と言ってくださる方もいて。希望があればお売りしています。売れるものとは思っていなかったので、価格は言い値でして(笑)出版社の方が購入してくれたこともありました。

飯田:
出版社の人が!嬉しくなるエピソードですね。入り口から入ると、こうしたポップや本棚を見て「街の本屋さんだな」と感じるんです。だからこそ、「ててたりと」の取り組みが気になっていて。ててたりとで働く”書店員”さんは、障害を持った、この事業所の”利用者”でもあるんですよね。

竹内:
はい、そうです。

 

※ たとえば、お話をお伺いしている竹内さんは「支援者」、お店で本を販売している書店員さんは福祉サービスの「利用者」にあたる。

 

竹内:
株式会社TETETARITOは、「就労継続支援B型事業所」と呼ばれる、障害を持った人に就労の機会を支援する福祉事業の会社です。この福祉事業を利用する人たちに対して、書店という働く場を提供しているんです。

たとえば、障害を持った人がクッキーなどのお菓子をつくる事業所がありますよね。「ててたりと」の場合は、その仕事が本を売ることだ、と思っていただけると分かりやすいのではないでしょうか。

「ててたりと」では3障害と呼ばれる身体障害・知的障害・精神障害の方すべてを受け入れていて、割合で言えば精神障害の方が7割程度ですね。

 

 

飯田:
そういった利用者さんは、紹介されて来るんですか?

竹内:
ほとんどは紹介ですね。支援機関や医療機関を通じての紹介が一番多いですただ、他の事業所に比べると、利用者さん本人
から直接の問い合わせが多いと思います。

本屋をやります」というのは、福祉サービス事業所としては珍しいため興味を持ってくれる人が多いのでしょう。「ててたりと」は埼玉県川口市にある本屋ですが、市外や東京といった県外から通われる利用者さんもいます。

 

飛び込み営業だって、お任せあれ。

 

 

飯田:
本屋さんの支援事業所。僕も聞いたことがありませんでした。

竹内:
調べた限り、日本には「ててたりと」だけみたいです。古本を扱うところはあるみたいですけどね。ただ、新刊を取り扱う書店は「てたたりと」が初めてです。

……あの、飯田さんにはどう見えますか? ふつうの本屋さんなのか、障害者の事業所なのか。

飯田:
ふつうの本屋さんに見えます。

竹内:
ああ、ということは、本屋さんなんですね。よかった。私は「これで本屋と言ってもいいのだろうか」と不安になることもあって。でも、地域の方がふらっと本を買いに来る瞬間に立ち会うと、「そうか、ここは本屋なのか」と実感できるんです(笑)

飯田:
発売間もない新刊も取り揃えられていて、街の本屋さんなんだな、と感じました。

竹内:
小学生がわざわざ漫画を注文して、学校帰りに買ってくれたりして。すごく嬉しいですね。このあたりでも本屋さんは少なくなっているので、「ててたりと」ができた時には街の方々に喜んでもらえました。

障害者支援の事業所ができることに地域の人からの支持があるのは私たち支援者にとっても嬉しいことなのです。

 

 

飯田:
そうか。それだけ、街にとっても本屋が求められていたんですね。

竹内:
近隣の町の本屋さんが数年前に閉じてしまい、少し距離のある大型書店まで足を運ばなければならなくなった方に喜ばれているみたいですね。

書店で本を売るだけでなく、雑誌の定期購読を請け負って、街のほかのお店に届けることもあります。

飯田:
雑誌の定期購読! 僕自身も、書店で働いていた時に雑誌を届けていました。本を配送するだけでなく、新しいお客さんの開拓といった仕事はどうしているんですか?

竹内:
配達も営業も、利用者さんが担当しています。基本的に書店の業務は利用者さんの仕事ですので、利用者さん本人が行っているんです。飛び込みでの営業もやっていただいています。

飯田:
えっ! そんなことまで!

竹内:
自分たち
支援者はサポートは行いますが、基本的に見守りが中心です。

飯田:
すごい。プロの営業マンですね。

竹内:
話す内容は
営業に出る前に練習したりもしますが、あとはとにかく「行ってみよう」と。

はじめは「今月は3万円分の定期購読を目指す」といった目標を立てていたんですが、私の方から「営業する軒数を目標にしませんか」と提案して、今はその形に落ち着きました。

飯田:
金額を目標にすると、達成できなかったことに落ち込んでしまいそうですね。

竹内:
はい、まさにそうなんです。「〇〇軒をまわろう」という目標にすれば達成しやすいですし、そのうち「これぐらいまわれば、成約するぞ」といった感覚も利用者さんのなかで掴めてきて。

定期購読営業の成約率も上がってきていて、今は4%を超えるくらいですね

 

効率化してしまうと、困るんです。

 

 

飯田:
すごいですね。とにかくまずはチャレンジして、そこから工夫していく。

竹内:
それこそ、立ち上げ当時は誰も本屋の経験すらなかったんです。返品の方法すらわからなかった。

飯田:
まさに手探り。本によっては、返品するまでの期限が決まってるものもありますからね。

竹内:
そうなんです。いろいろな失敗を重ねて、とにかく出版社や取次の方に電話してながら進めていました。オープンして3ヶ月経ったときくらいかな、気づいたんです。この仕事の肝は、「返品を間違えないことだ」と。

飯田:
売ることじゃなくて、返すこと(笑)

竹内:
はい(笑)

もちろん、返品することが本屋としての目標ではありません。やはり本をたくさん売ること、収益を上げることだと思います。でもまずは、「返本でミスをしない」ということを皆で共有し、しっかりこなせるようになってから、本屋として余裕が出てきたんです。

そこから、売ることに専念できるようになりました。まずはシンプルなことから始めようと。

飯田:
事業所の支援者も利用者も、一緒に試行錯誤しながら進めていった。でも、細かいところではありますが、本棚に並ぶ本がピシッと揃えられていて、今はすごく整った本屋に見えます。

竹内:
ありがとうございます。手探りで時間をかけてきたからこそ、効率化したくない部分もあって。時々、本屋の設備やシステムについての営業をいただくこともあるんですが、効率化しすぎると仕事がなくなる。

うちは作業機会を提供する場所なので、やる作業がなくなってしまうと困るんです。こちらが指示を出すだけでなく、本をきれいに揃える、店舗の掃除するなど、利用者さんが自発的に考えて動いています。

飯田:
仕事がないと困る、というのは興味深いポイントですね。とはいえ、その中で自分たちで仕事をつくり出していく側面もあるというのは、とてもおもしろい話です。

 

時には「話しかけたい」書店員がずらりと並ぶことも。

 

 

飯田:
ただ、本屋の仕事って、本の発注や陳列だけでなく、お客様とのコミュニケーション、接客がありますよね。そこは、モノをつくる事業所とは違う点だと思います。そういったお客様とのコミュニケーションの部分についてはどうされているんですか?

竹内:
作業は本人の希望をもとに決めているので、
人の前に立つのは苦手という利用者は店頭に立たなくても問題ありません。ただ、「ててたりと」の場合はむしろ、過剰にお客様に話しかけるシーンの方が多いかもしれません。

「お店番を担当したい」という人が多くいて、時にはこの狭い本屋に6人ぐらいの書店員が立っています(笑)

飯田:
ははは!(笑)

竹内:
お客様がなにか聞こうものなら、もう大変ですよ。話したいスタッフがたくさんいますから。でも、過剰とも言える  “ほっとかない” という姿勢は、「ててたりと」ならではのは良さとも思っているので、注意はしません。逆に、年配のお客様はそれを楽しんでいたりもしますね。

飯田:
来店される方は、ここが障害者支援の事業所だと知っているんですか?

竹内:
そうですね。地域の皆さまは、それを知った上で利用してくださる方が多いです。

 

障害者が働く社会が、いい社会?

 

 

飯田:
“本屋”としてのお話をたくさん聞けたので、ここからちょっと障害者支援の”事業所”としての側面をお聞きしていきたいです。就労を支援するための事業所、ということは、通われている利用者さんは「働くこと」を目的にしているんですか?

竹内:
働くために通っている人もいますし、居場所として過ごしている人もいます。それぞれの人に合った形やペースで、運営できるようにしているんです。その分、「私はがんばって働いているのに、あの人は全然働いていないじゃないか」と利用者さんに言われることもありますね。

飯田:
ああ、なるほど。そういった声が上がったときは、どうしているんですか?

竹内:
シンプルなことではありますが、話し合いをして
、理解をしてもらっています。「ててたりと」には、みんなそれぞれ理由があって来ているんだ、それを互いに尊重することが大切では、という視点で話をしています。

飯田:
それぞれの向き合い方で、仕事を手がけていくのが大切だと。

竹内:
一般的には、「障害者が働く社会が、いい社会」と思われているかもしれません。でも、
本当にいい社会って「働きたい人が働ける社会」だと思うんです。

ある利用者に言われたことがあるのですが、最近はどこの福祉施設に行っても「働け、働け」と言われるそうです。昔は「もっとゆっくり」とか「休んで」って言われたのに、と。

確かに、そういうこともあると思います。国の施策も、働くことを前面に出してきているように感じます。ただ、働くことや働き続けることが難しい人、働くにあたって配慮が必要な人が多くいるのも、事実です。

 

公平な場所だからこそ、ここをステップにしてほしい。

 

 

飯田:
「働きたい人が働ける社会」がいい社会だ、というのは本当ですね。

自分を振り返っても、「働きたいから働いている」と「働かされている」は、感覚が全く違います。働かされているときは、のんびりマイペースで動いている人がいたら、ずるいと感じてしまう。「ててたりと」は、そこを許容しようとしているんですね。

竹内:
ベースにはその考えがあります。

こういった事業所は、利用者さんの能力によって待遇の差をつけらません。例えば、他の人より倍の成果を出した人に倍の報酬を渡す、といったことはできないのです。そういったことに不満がでることもあります。

飯田:
そうか、一般の企業とは事情が異なってくるんですね。

竹内:
そんな時に
私がよく言っているのは、「ここをステップにしてほしい」ということです。働きたい、お金を稼ぎたい。その意思があるのならば、ここをステップにして一般就労に向かってほしい。

 

飯田:
「ててたりと」をステップにして、一般の企業に就職する。すでに、そういう
動きも出てきているんですか?

竹内:
はい。就職する人は、1年に1人か2人ですね。2018年にこの本屋を開いて、だんだんとそういうことも考えられるようになってきました。

 

自分たちが行っているのは”ビジネス”だと忘れないために。

 

 

飯田:
ちなみに、「ててたりと」を株式会社にした意図はなんなのでしょうか。たとえばNPO法人にする、という選択もありますよね。

 

竹内:
祉事業所の在り方について勉強しているうちに、利用者をコンシューマー(消費者)として再認識してサービスを提供していきたいと考えました。利用者をサービスを受ける主体、つまり福祉サービスの「消費者」、我々の「お客様」としてみる視点はとても大切だと思います。消費者、お客様に対してしっかりとサービスを提供し、その対価をもらう。世の中のサービス業とはそういうものだと思います。

サービスという文字の前に「福祉」とついている「福祉サービス業」も特別ではなく、基本的にサービス業そのものではないかと。

福祉サービス事業所内で、支援者等による障害者への虐待のニュースも目にすることもあります。そう行ったことが起きるのも、事業所や働く支援者が利用者を「お客様」だと思えていない、ということだと思うのです。

レストランでもスーパーでも、店員がお客様に手を上げたり、傷つけることを言ったりすることって、あまり聞かないですよね。「お客様にそんなことしません」というのが当たり前なんだと思います。

飯田:
たしかに。

竹内:
では、お客様と意識するにはどうしたら良いか。それはお客様からサービスの「代金」をいただくことだと思います。そして「代金」をいただくためにサービスをブラッシュアップしていく、そんな循環ができたら良いなと。そういう視点で自分たちを縛っていくために、株式会社という営利法人のほうがよいと思いました。

株式会社ではいろいろな税金も払わないといけないですし、財務等を考えたときに、NPOといった非営利法人のほうが福祉サービス事業所を運営するという点では優位だったかもしれません。しかし、コンシューマー、サービス業といったところを我々が自覚し続けていくために、株式会社という形をとりました。

飯田:
なるほど、その姿勢を明確にするための株式会社なんですね。

竹内:
そうなんです。「どうして株式会社なんですか?」とよく聞かれるのですが、
僕たちはお客様であったり、社会に対して価値を発揮していく、という意識を強く持っていたいんです。とはいえ、社会福祉法人でも、NPOでも、同じように考えて運営されているところもたくさんあります。結局は、その団体の考えに尽きますね。

 

ここは居場所でもあるから、潰れるわけにはいかない。

 

 

飯田:
少し突っ込んだ質問になりますが、そのように「
就労継続B型事業所」の本屋を続けられてきて、本の売上はどのように変動しているんですか?

竹内:
実はオープン以降、あまり変わっていないんですよ。

飯田:
変わっていない。それもすごいお話ですね。維持しつづけている。

竹内:
「続ける」ことって、とても大事なんです。それこそ、
普通の本屋としては「潰れてしまうかなぁ」と思う瞬間もあるんです。ひとつのビジネスとして本屋単体を捉えると、やはり町の小さな本屋さんが無くなっているわけですから、そんな風に思う瞬間もあります。

でも、福祉事業所としては、潰れるわけにはいかないんです。

 

 

飯田:
ここは利用者さんの居場所でもあるから。

竹内:
はい、そうなんです。「ててたりと」は福祉事業所
として、「ここにないと困る」という人がたくさんいるんです。そこは、何があっても守らないといけない、続けなければいけないポイントだと思います。

身近な部分で言えば、運営する私たちの都合で「明日は事業所を閉めます」なんてことになったら、大問題なわけです。スケジュール通りに、ちゃんと福祉サービス事業所として開いている。これは、すごく大事な部分でもあるし、実際に、とても大変なことでもあります。

それでも、やり続けていくことを大切にしていかないといけません。

飯田:
「続ける」。ほんとうに、基本的だけれども、大きなパワーが必要とされることですよね。

 

障害を持った人が安心して来られる場所にしないと、「ててたりと」は成り立たない。

 

 

飯田:
この場所がここにあり続けるために、竹内さんは何を意識しているんですか?

竹内:福祉事業所として地域に貢献できているか、です。

飯田:
貢献できているか。

竹内:
貢献できている」とは、つまり、地域からの要望に応えてるかということです。いい加減な仕事して、地域に貢献していないところは、当たり前ですが地域から評価されません。

たとえば「ててたりとにはしっかりした支援者がいて、よく支援してくれる」という地域への貢献が評価につながります。つまり我々がより良いサービスを提供することで、その評価が向上し、利用者が紹介などで集まってくる。支援機関や医療機関も、しっかりと仕事ができる事業所や支援者でないと、心配で利用者を紹介できないと思います。

飯田:
支援機関の紹介を通して利用者さんがやってくるのも、地
域貢献と評価の現れなんですね。

竹内:
そうなんです。「ててたりと」に良い支援者が
いて、良い支援を行えば、利用者も集まってくる。利用者が集まってはじめて福祉事業所として継続できる。そうすることで、生産活動である街の本屋が続いていくことにも繋がるんです。

 

 

竹内:
「福祉事業」と「生産活動」の会計は、きちんと別にしないといけないんです。つまり、「生産活動」である本屋でたくさん本が売れたなら、そのお金を利用者さんの工賃に還元したり、本屋の経営には活かせます。しかし、こうした場を整える「福祉事業」には、そのお金を使えない。

では「福祉事業」はどうするかと言うと、お話した通り、利用者さんの人数に応じて国から補助金が支給されるので、それを活用するんです。つまり、障害を持った人に「ここなら安心して来られる」と思ってもらえる場所にしないと、本がたくさん売れるだけでは「ててたりと」は成り立たないんです。

 

街の人も、関わる会社も喜んでもらえる本屋が生まれていったら。

 

 

飯田:
お話を聞けば聞くほど、福祉と事業、その二面性を持った場所なんだと感じます。ちなみに、これから新たにチャレンジしていきたいことや、今後の展望はありますか?

竹内:
私たちだけの話ではなくなりますが、
こういった形態の書店がほかにも増えていくといいな、と思っています。

飯田:
ほかの事業所も”本屋”というやり方にトライしてもらえたら。それはなぜですか?

竹内:
「ててたりと」という単体の本屋だけを見ると、取次にとっては取引するメリットが少ないからです。

同じような本屋が生まれてくれば、販売先が広がる。取次も協力しやすくなるし、市場が活性化しますから。このことについては、「ててたりと」をオープンする前から取次とも話していることなんです。

飯田:
竹内さんとお話していると、相手側のメリットであったり、
お客様目線のサービスを考えていたりと、ビジネスとして真摯に取り組まれていることがよく分かります。「ててたりと」を新たに増やす、という構想はあるんですか?

竹内:
まずはここをしっかりとやっていくことに注力しています。書店がない市町村も増えているようですが、そういったところにも福祉サービス事業があります。そういったところで書店をやってみるところが現れたら良いなぁと思います。

 

 

竹内:
街に新刊書店がなく、本を読みたいけれど手に取れる場所がない。そんなところでこうした本屋がつくられれば、街の人にも、事業所を利用する人にも喜んでもらえると思います。

私たちの福祉事業も、これまでともっと違う形に変わっていくかも知れません。でも、既存のやり方と異なっていったとしても、自分たちは自分たちなりの形で「続けて」いきます。

 

 

「ててたりと」をあとにして。

 

 

「ててたりと」という名前の由来について尋ねたところ、「とりたてて」という日本語を逆から読んだものだと教えてもらいました。

 

「『とりたてて』って、「特別〇〇ではない」という、打消しの言葉ですよね。この言葉を用いることで、障害を打ち消すという意味を込めたくて。また、この本屋はある人にとっては「特別な場所ではない」けれど、反対から読むことによって、「特別な場所である」と見ることもできる。そんな風に考えたんです。」

 

「ててたりと」のHPには、

“他所ではなく、ここで働きたいかもしれない。他所ではなく、ここで本を買いたいかもしれない。”

という言葉が載っています。

 

特別である、ということ。

特別ではない、ということ。

 

障害を持った人への支援事業である、ということ。

お客様目線を持った本屋というビジネスである、ということ。

 

「ててたりと」は、常に両面を包み込みながら経営を続ける、真摯でパワフルな本屋でした。

 

■ ててたりと 店舗情報

本屋 ててたりと 

HP:
http://tetetarito.com/

アクセス:
埼玉県 川口市 上青木西5-25-17

開所時間:
月〜土: 9:45 – 17:00

 

posted by 飯田 光平

株式会社バリューブックス所属。編集者。神奈川県藤沢市生まれ。書店員をしたり、本のある空間をつくったり、本を編集したりしてきました。

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