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2019-12-06

被災地を支える「こどもたちの居場所」

 

 

こんにちは。バリューブックスの北村です。

12月に入りました。

早いもので、台風19号の被害からもうすぐ2ヶ月が経とうとしています。

バリューブックスでは、支援の手段のひとつとして、本で寄付する「チャリボン」をご紹介してきました。

さまざまなNPO団体と提携しており、バリューブックスに本をお送りいただくことで、買取金額を指定の団体へ寄付することができるチャリボン。今回の台風19号において、復興支援を行うNPO団体は、「チャリボン特設サイトから確認できます。

 

認定NPO法人カタリバ」は、そんなパートナー団体のひとつ。子どもたちに多様な出会いと学びの機会を届け、生まれ育った環境に関係なく、未来をつくりだす意欲と創造性を育む活動に取り組んでいます。

 

 

ただ安心できる場所を

 

被災地の支援は、医療支援や物資支援、復旧作業の手伝いなどいろいろありますが、カタリバではあくまで「教育現場」の視点から、子どもたちや、その親に向けた支援を行なっています。

 

長野市では多くの家が浸水被害に遭い、学校なども休校になっていることから、カタリバでは、「こどもたちの居場所」に注目しました。
そして台風被害をうけた翌週の週末である10月19日と20日の二日間にわたって、長野市立柳原小学校にて「コラボ・スクールながの」が開催されました。

 

このコラボ・スクールながのが開催されることを知り、バリューブックスもブックバスを走らせました。持ち込んだ本はすべて、バリューブックスでは値段がつけられず、捨ててしまっているもの。その中から状態がきれいで、まだまだ楽しんでもらえそうな本を選んでプレゼントすることに。不安な日々のなかで、少しでも時間を忘れて夢中になれるものが見つかれば、という思いで上田から向かいました。

 

 

 

開催初日、急な開催にもかかわらず、会場にはたくさんのボランティアが集まっています。

子どもたちと遊ぶ女性たちは、ふだんは地元の保育園で働く保育士さんです。
SNSでボランティアを募る投稿をみて、駆けつけてくれたそう。

慌ただしく会場の準備が進められる中、受付がはじまると、不安そうに会場をたずねる親子の姿が。

「大変でしたね」

スタッフが声をかけると、安心したのかお母さんの顔にほっとした表情が浮かびます。

 

 

親と離れて預けられた子どもたちも、最初こそ恐る恐るといった様子でしたが、次第に慣れてきたのか笑顔が目立つようになりました。

ドッジボールで体を動かしたり、ぐるりと輪になってUNOを広げたり、好きな色でふすまに落書きをしたり。

できたばかりのお友達と思い思いの時間を楽しみます。

 

 

 

本当の助けは、被災直後に求められる

 

被災地の子どもたちの支援をおこなう「コラボ・スクール」。

そのはじまりと役割をカタリバの広報を務める本村さんにお伺いしました。

 

本村:「きっかけは、東日本大震災でした。被災して家を失ったこどもたちは、同時に安心して学ぶ場所も失ってしまいました。仮設住宅に暮らす中高生のこどもたちは、狭いスペースで、ちいさい兄弟たちがいると、放課後に落ち着いて勉強する場所すらありません。そこで、こどもたちが安心して机に向かったり、放課後に友達と過ごせる場を提供するため、コラボ・スクールは生まれました。」

 

しかし、今回のコラボ・スクールはいつもと少し、様子がちがいます。

 

本村:「前回の台風15号では、教育現場からなにかサポートできることはないかと調査に入ったのは、発生から数週間経った頃のことです。その時に投げかけられたのは『もっと早くきてほしかった』という言葉。そしてそれはとくに子どもを持つ親からの切実な声でした。そこではじめて、いちばん助けが求められるのは被災直後なんだと、痛感しました」

 

 

そんな反省を生かし、今回の台風19号では、発生の翌日から現地に入り、復旧作業の手伝いと並行してニーズ調査を開始します。

そこで集まってきたのは、「復旧作業にかかりきりで子どもに手がかけられない」「感染症の不安もあるが、作業中に子どもだけが避難所にいる状態も不安」「避難所や親戚の家では、自由に遊ぶスペースがなく子どもたちのストレスもたまりがち」という声。自宅や近所で浸水被害が発生した地域では、大人たちは連日、復旧作業に追われる中、多くの家庭で子どもたちの預かってもらえる先を求めていることがわかりました。

被災地の10代のこどもたちを中心に開催されてきた「コラボ・スクール」は、今回はターゲットを広げ、未就学児など、小さい子どもを持つ親たちにも、気軽に利用してもらえるスペースとしてオープンしました。

 

 

教育委員会からのメールで「コラボ・スクールながの」の開催を知ったという、小さい子どもを持つ女性は、積極的に復旧作業に関われないことで、無力感に覆われていたと話します。

「一本道が違うだけで、まったくの別世界になってしまいました。自分の家は浸水被害に遭いませんでしたが、近所に住む子どものお友達の家がやられてしまって。手伝いにいきたくても、まだ小さい子どもを抱えてはいけないし、もどかしい気持ちでいっぱいでした。こういう場所を作ってもらえて本当にうれしいです。ありがとうございました」と、話すその目には涙が浮んでいました。

直接的な被害はなくても、ライフラインが止まり、見慣れた景色が一変したことで、自然と家庭から笑顔はなくなっていたそう。

参加した子どもたちは「久しぶりにいっぱい笑えて、いっぱい遊べて楽しかった!」と笑顔で話してくれました。

 

最初の2日間を盛況のうちに終了し、その後も場所を変えながら開催しているコラボ・スクール。

ブックバスではそのうちの数回の参加でしたが、じっくり選んだ本をうれしそうに抱えて帰る子どもたちの姿が焼き付いています。きっと自宅の本がだめになってしまった子どももいたのでしょう。思い出の代わりにはならないかもしれませんが、心の拠り所になれる本と出会えたならうれしく思います。

 

これからの「コラボ・スクールながの」

 

さて、このコラボ・スクールですが、当初は11月で終了を予定していました。

けれど、利用者のなかには、いまだ避難所や車の中で生活している人もいます。

内閣府によると、台風19号などの影響で避難所での生活を余儀なくされている人は、11月25日の時点で、2000人。そのうち611人が長野県の避難所に身を寄せているそうです

「家の復旧のメドも立たない中、子どもを預かってくれて大変助かる。開催がなくなると本当に困る」
「車の生活で我慢をさせている子どもが唯一楽しみにしているのがコラボ・スクールなんです」

開催期間中、利用者からはそんな声が多く届いたことから、カタリバでは、引き続き12/22(日)まで長野県内でのコラボ・スクールの延期が決定されました。

場所:長野市東部文化ホール[通称:柳原公民館]
時間:9:00~17:00(土日祝のみ)
(※ブックバスの参加は予定していません)

 

先の見えない復旧作業に、心をすり減らしている方は少なくないと思います。
いま「子どもの居場所」にお困りの方は、どうぞ訪ねてみてください。
子どもにとって安心して笑える場所があるのは、なにより希望になるはず。

だんだんと、冬の寒さも厳しさを増してきました。
避難所生活が長引いている方々は、くれぐれもお体お気をつけください。

チャリボンでは引き続き、本による寄付を集めています。
カタリバへのご支援は、チャリボンサイト、もしくはホームページからどうぞ。

 

本で寄付する
https://www.charibon.jp/project/262194/

カタリバ ホームページ
https://www.katariba.or.jp/

posted by 北村 有沙

石川県生まれ。上京後、雑誌の編集者として働く。取材をきっかけにバリューブックスに興味を持ち、気づけば上田へ。旅、食、暮らしにまつわるあれこれを考えるのが好きです。趣味はお酒とラジオ。

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