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2019-08-22

店長は小学生。1日限定の小さな本屋「こどもほんや」へようこそ !

 

こんにちは。

バリューブックスの北村です。

 

8月も終わりに近づき、「残暑」という言葉もちらほら聞くようになりましたね。

夜に響く虫の声からは、秋の訪れすらも感じられます。

 

さて、今回は夏真っ盛りに開催されたイベント

「こどもほんや」についてのレポートをお届けします。

 

青空の下、それぞれの屋号を掲げオープンした24の小さな本屋。

そこには、バリューブックスで子育てをしながら働く、

お母さん・お父さんの希望が詰まっていました。

 

 

「こどもほんや」ってなに?

 

そもそも「こどもほんや」って、どういうイベント? 

何のために開催されたのでしょう?

 

当日の様子を綴る前にイベントの開催にいたるまでの背景を紹介しますね。

 

こどもほんやとは、小学生の子どもたちが自ら本を選び、値段を付け、販売する、1日店長を体験するイベント参加するのは、バリューブックスで働くスタッフの子どもたちです。

販売する本は、バリューブックスに集まった本のうちインターネット上では価値がつかずに、捨ててしまっているもの。(正確には古紙リサイクルにまわしています)

その売上金は地元上田市のNPO団体に寄付されます。

 

 

夏休みを過ごす、子どもたちの居場所を作る

 

イベントの主催は「うぃずきっずプロジェクト」のメンバーです。

バリューブックスで働くお母さんが中心となって運営するこのプロジェクトの目的は、社内に託児所を作ること。

今回はその第一歩として、夏休みの間に社内で子どもと大人が一緒に楽しめるイベント「こどもほんや」が開催されました。

 

「子育てしながら働くスタッフの共通の悩みが、夏休みに子どもを預ける場所がない、ということなんです」

そう話すのはプロジェクトメンバーのひとりである大澤さん。2人の小学生の子供を持つ母親でもあります。

 

「外は子どもだけじゃ危なかったり、そもそも暑過ぎて遊ぶどころじゃない。友達の家も共働きで親が不在だったりすると遊びに行けないし、結局、自分の家でゴロゴロしてるしかない。児童センターもあるけど、毎日そこに預けていていいのかと不安な親も多いんです。

小学生の子どもたちの居場所作りのひとつとして、地域の人と繋がれるイベントができたらと、今回のイベントが生まれました

 

 

選書から値付けまで行う、自分だけの本屋さん

 

社内で子どもを持つスタッフに声をかけ、24人の小学生が集まりました。

本の査定や発送を行う上田原倉庫と、ブックカフェNABOの2つの場所で、

それぞれ1日店長を勤めます。

 

さて、ここからは当日の様子を写真とともにお伝えしていきますね。

 

朝9時、上田原倉庫に集まった子供たち。

簡単に自己紹介を終えるとさっそく、選書スタート!

大量に並んだ本の中から、ひとり約30冊の本を選んでいきます。

 

 

 

集められたおよそ40ケースの中身は、査定の際に値段が付かなかった本やCD。つまり、捨ててしまう本の中から、状態がきれいなものを選別し、その中からさらに子どもたちの手によって、自分のお店に並べたいものをピックアップします。

 

「お客さんは子どもだけじゃないからね〜!」

 

そんな大人たちのアドバイスのもと、ふだん自分たちが読んでいる絵本や児童書のほかにも、赤ちゃん向けの絵本や、大人向けの分厚い小説やマナー本なども手にとっていく子どもたち。「お母さんが好きだから」と、ある歌手のCDを見つけ自分のケースにいれる男の子の姿に、思わず胸が温かくなりました。

 

本が選びおわったら、今度は看板作りです。

 

 

 

「ステラ・ルー」や「マリオブックス」など、好きなキャラクターの名前を使ったものから、「たいせつブックス」「変な本屋」など個性的な屋号まで、さまざまな名前がテーブル上に並びます。

 

さいごに選び終わった本に値段を付けて、棚に並べたら、1日限定の小さな本屋さんは完成。

それぞれ与えられたスペースを自由に使って、こだわりのレイアウトを作りました。

 

 

 

 

 

 

そして迎えた、11:00。

1日限りのこどもほんやがオープンです!

 

 

 

孫の活躍を見にきたおばあちゃんや、新聞を見て遊びにきてくれた親子など、オープンと同時に続々とお客さんが集まってきました。

大声でお客さんを呼び込む子がいれば、自分のおすすめの本を丁寧に解説する子も。

太陽の下、大粒の汗をかきながら、それぞれの接客に励みます。

 

 

 

レジの担当は大人たち。

どこの本屋の本がどれだけ売れたのかわかるように、値付けシールをはがして台紙に貼っていきます。

すっきりとおいしい、ふるまいレモネード(スタッフの手作り)も好評でした!

 

その後も客足は途絶えることなく、予想以上にたくさんのお客さんが来店してくれました。

 

 

熱気あふれる上田原倉庫チームとはうってかわって、NABOチームは緑と音楽に包まれた、さわやかな本屋が広がります。

こちらはドリンクの販売もあり、どこか夏祭りのような雰囲気も。

同時開催のフリーマーケットもあり、大人も子どもものんびり滞在していく人が多い印象でした。

 

 

 

 

子ども目線で選ぶ本のセレクトは、大人からみても新鮮だったようで、

ほくほくと笑顔で、抱えるほどたくさんの本を買って帰る人も多く見られました。

 

 

 

本の売上は地元のNPO団体へ

 

お昼を挟んであっという間に3時間のイベントは終了。

この日、24人の子どもたちが出した売り上げは…

 

上田原 220冊 32,600円

NABO 226冊 22,620円

 

ここにブックバスの売上も加わり、合計560冊 80,070円の売上に!

たった3時間で、捨てられる本にこれだけの価値が生まれました!すごい。

 

そしてこれらの売上金はすべて、上田市内の4つのNPO団体に寄付されます。

 

【寄付先団体】

保護された犬猫の里親探しを行う一匹でも犬・ねこを救う会

地域に根付き子育てを応援する子育て応援団ぱれっと

アートを通して障害を持つ人たちの何気ない自由を支えるリベルテ

若者の自立をサポートする侍学園スクオーラ・今人

 

子どもたちは上記の中から売上の寄付先を決めると、団体に宛てたメッセージカードを書きはじめました。

「どんなところか自分で見に行けるところがいい」と、寄付先にこどもレストランを運営する「子育て応援団ぱれっと」を選んだ男の子。カードには「おいしいごはんをつくるためにつかってください」と言葉が添えられていました。

 

 

 

 

イベント終了後、子どもたちに感想を聞くと、暑さのなかで疲れはあったものの「たのしかった!」「またやりたい」「本がたくさん売れてうれしかった」と次々と元気な声があがりました。

 

「こどもほんや」は、子どもたちにとっても、そして前例のない中、一からイベントを作り上げた大人たちにとっても、忘れらない経験になったのではないはず。

 

子育てしながら働くお母さん、お父さんが子どもと一緒に安心して働ける会社を目指して、スタートを切ったうぃずきっずプロジェクト。

動き出したばかりのプロジェクトの今後の展開が楽しみです。

 

 

 

撮影:篠原幸宏

posted by 北村 有沙

石川県生まれ。上京後、雑誌の編集者として働く。取材をきっかけにバリューブックスに興味を持ち、気づけば上田へ。旅、食、暮らしにまつわるあれこれを考えるのが好きです。趣味はお酒とラジオ。

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