EndPaper

本に触れる。
その小さなきっかけを届ける
ウェブマガジン。

2024-12-18

本屋で働くわたしたち vol.10 【 バリューブックスのスタッフ紹介】

 

現在バリューブックスでは、高校生から60代までの約300人のスタッフが働いています。フルタイムスタッフだけでなく、子育てをしながらやWワークなど働きかたもさまざま。

多くのスタッフは、全国から届いた本の査定や、オンライン注文商品の発送などを行うロジスティックス部に所属していますが、ほかにも、システム部や、総務経理部、マーケティング部、カスタマースタッフ、寄付事業や実店舗運営にたずさわるスタッフなど、あらゆるシーンで会社をささえる人がいます。

「本屋」としていくつもの顔をもっているバリューブックスですが、一体どんな人が働いているのか、その仕事内容や、スタッフの人となりが伝わるお気に入りの本をご紹介します。

本屋の裏側をのぞくような気持ちでお楽しみください。

 

 

第10回は、選書担当の笠井さんをご紹介します。

値段がつかず、古紙回収に回るはずだった状態の良い本を拾い上げ、次の読み手へとつなげる役割を担っています。社内では「大の読書家」としても知られる存在です。

 

 

──自己紹介をお願いします。

 

笠井です。
長野県上田市の出身です。仕事場でも家でも本に囲まれて暮らしています。

2020年入社、5年目になります。

 

 

──バリューブックスに入社した経緯を教えてください。

 

大学で日本近世史を専攻しており、大学院への進学を考えていましたが、諸事情で断念しました。

就職活動もしておらず、どうしようかと思っていたときに現社長の鳥居さんとお会いし、夏休みにインターンシップのような形で働かせてもらうことになりました。

本に囲まれた環境に惹かれて、そのままバリューブックスに就職しました。

大卒ではバリューブックス初の新卒入社だったため、当時は社内がざわついたそうです。

 

 

──バリューブックスではどんな仕事をしていますか?

 

普段は全国からの査定物が届く倉庫にいます。

倉庫には毎日1万冊単位の本が送られて来ますが、その半分ほどは市場価格や在庫の問題で買い取ることができていません。

それらは古紙回収へと回されますが、まだまだ読むことができる本も少なくありません。

そういった本たちを拾い上げ、無印良品の店舗や弊社の実店舗であるバリューブックスラボで「捨てたくない本」として販売しているほか、ブックギフトとしても活用しています。

 

 

またもう一つの実店舗、本と茶 NABO」では主に人文書の選書を担当しています。

 

 

NABOでは、「本を読みたいのに、なぜか読めない。」そんな人のために、書店営業が終わった後に集中して本を読むための、「読書室」の活動も始めました。

 

「読書室」の営業スケジュールはこちら

 

──バリューブックスで働くおもしろさややりがいは、どんなところに感じますか?

 

膨大な量の本に触れているので、未知の本に日々出会えて刺激的です。

どうしても一定数は古紙回収に回さざるを得ないのですが、本として次に繋げることができたときにはやりがいを感じます。

 

──どんなジャンルの本をよく読みますか?

 

文芸(小説・詩など)、人文・社会科学、コミック、文庫

 

 

──普段、どんな時に本を読みますか?

 

平日はお昼休みや就寝前に読みます。休日はまとまった時間をとって、約30分ごとに休憩をはさみながら読みます。電車での移動中に読むのも好きです。

 

 

──最後に、お気に入りの本を教えてください。

 

 

①最近これ読みました

 

 

歌集 宇宙時刻

小関茂 著 / 点滅社 / 2024年9月5日 発行

ここ数ヶ月は短歌を読んでいます。その中でも印象的だったのが『歌集 宇宙時刻』でした。それまで定型の歌を中心に読んでいたので、「短歌ってこんなにも自由なんだ!」と衝撃を受けました。身近な小さな出来事を読んだものから宇宙など壮大なテーマまで、明治生まれとは思えない著者のセンスが光ります。

生命か、生命は酸化だ、燃焼だ、こわれかけたふいごだ

(収録作より)

 

②なんだか気になる積読本 

 

 

『アイヌ通史』

リチャード・シドル 著,マーク・ウィンチェスター 訳 / 岩波書店 / 2021年7月30日出版

日本近世史のなかでも幕府とアイヌの関係について勉強していました。NABOでも関連書籍は多めです。アイヌは中世・近世、そして近代と差別と抑圧の対象とされてきました。本書はマジョリティである日本人が創り出してきた構造に抗い、アイヌたち自身による物語を紡ぎ出す過程を描きます。『ゴールデンカムイ』のヒットで関心は高まっているように感じますが、負の側面と向きあい、次の段階へと進む一助となるのではないかと期待しています。

 

③やっぱり手放せない本 

 

 

 

『明夫と良二』

庄野潤三 著 / 講談社 / 2019年2月9日発行

「第三の新人」のひとりである庄野潤三は定期的に読んでいる作家です。神奈川近代文学館での「庄野潤三展」にも行きました。私小説の名手である彼の作風は時期によって変化していきますが、「山の上」で子どもたちが成長していく日々を綴る作品群が特に好きです。見逃してしまいそうな何気ない日常に目を向け、ユーモアも織り交ぜながら掬い取っていく文章に心惹かれます。

 

 

 

posted by 北村 有沙

石川県生まれ。上京後、雑誌の編集者として働く。取材をきっかけにバリューブックスに興味を持ち、気づけば上田へ。旅、食、暮らしにまつわるあれこれを考えるのが好きです。趣味はお酒とラジオ。

BACK NUMBER