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2022-11-01

北極冒険家・荻田泰永さんが手がける絵本『PIHOTEK ピヒュッティ-北極を風と歩く-』発売記念トークイベント開催!

20年以上にわたって北極行を経験し、北極圏各地をおよそ10,000km移動し、さまざまな快挙を達成してきた、日本唯一の北極冒険家・荻田泰永さん。今回はじめて「絵本」という形で自身の北極での体験をまとめ、絵本作家の井上奈奈さんの描く美しいイラストと共に世に送り出しました。

バリューブックスの実店舗「本と茶 NABO」では、2022年11月13日(日)に『PIHOTEK ピヒュッティ-北極を風と歩く-』の出版を記念した、トークイベントを開催します。

 

命と風をテーマに美しい絵と言葉で表現した北極。ピヒュッティとは、イヌイット語で「雪の中を歩いて旅する男」という意味を表します。死と隣合わせの地を、荻田さんが歩み続ける理由は何なのでしょうか。

トークイベントの開催を前に、北極との出会いや、20年以上挑み続ける極地冒険のこと、そして昨年オープンした自ら店主を務める書店について、お話をおうかがいしました。

日常を飛び出して向かった北極の地

 

荻田さんが初めて、北極の地に踏み入れたのは22歳の時。大学を辞め、持て余したエネルギーの発散場所を探していた頃、たまたまテレビで見かけた冒険家の姿をみて興味を持ったといいます。

「大場満郎さんという冒険家の方で、凍傷で足の指すべてを失いながらも、何度も極地に挑戦する姿が衝撃的でした。番組の最後に、若者を連れて北極を旅する予定を話していました。それを聞いて、自分も連れていったもらえないかと手紙を出したんです」

その後、とんとん拍子に話はまとまり、その翌年、チームメンバーとして遠征に参加することに。それまで、登山などのアウトドア経験や、海外への渡航経験もなかった荻田さんは、いきなり北極へ約2ヶ月に渡る旅に出かけます。

当時の体験を、自身の著書のなかでこう記しています。

「初めての北磁極行で、最後に北極海の大乱氷帯をみた時のことは忘れられない。北磁極まで35日かけて700km歩く中で見てきた、比較的穏やかな海氷が続く島部と、猛り狂うように氷の荒れる北極海の激しさは別物だった。世界の冒険家たちはこんな激しい世界を体一つで乗り越えていくのか、という衝撃を感じた。その人間離れしたような能力を得るために、どれだけの情熱を注ぎ、経験を積み上げたのだろうかという感動があった。そんな人たちへの憧れと、また自分でもそれをやってみたいという、密やかな衝撃が芽生えていた。(『考える脚 北極冒険家が考える、リスクとカネと歩くこと(KADOKAWA)』より)」

 

たったひとりで歩く

 

「何かが変わるんじゃないか」という期待を胸に参加した荻田さんでしたが、帰国したあとに待ち受けていたのは、元の日常でした。

「誰かに連れ出してもらうのではなく、自分から動かないと変わらないと思って、翌年からひとりで歩き始めました。日本にいる間に資金を工面し、向こうで過ごすのは約2ヶ月から長い時で4ヶ月。渡航を重ねるごとに北極の難しさ、面白さを見出せるようになり、それが何度も北極へと足を向かわせる原動力になっていきました」

 

前人未踏の旅を続けるなか、2018年には、日本人初の南極点無補給単独徒歩到達にも成功しました。

「無補給単独徒歩」とは、途中で外部からの物資再補給を受けることなく、食糧やテントなど必要な物資を載せた100キロを超えるソリを引き、たったひとりで冒険の達成を目指すもの。

過酷な環境下、まだ誰も試していないことを実現していく「自由」は、忘れられない体験だといいます。

 

本を通じて旅に触れる

 

2021年5月、荻田さんは新たな活動として、旅と冒険をテーマにした「冒険研究所書店」をオープンしました。

 

 

「もともと装備を保管する事務所として借りた場所でした。緊急事態宣言下で一斉休校になった時に、子供たちの居場所として無償開放したことをきっかけに、地域の人が気軽に集まれる場として書店を開きました」

冒険家が自ら行う本のセレクトは、これまで読んで感銘を受けた本、これから読みたい本、読んでほしい本を選んでいるそう。テレビで初めて冒険に触れた荻田さんのように、本を通じてだれかの冒険心を掻き立てているかもしれません。

 

言葉では届かないもの

 

荻田さんは自身の冒険の旅を、これまで2冊の著書を通じて表現してきました。しかし、書くほどに言葉では届かない部分を痛感するようになったと話します。

「10万字の言葉を尽くしたところで、伝えることに限界がある。言葉とは違うアプローチなら、たとえば一枚の絵から表現できることもあるんじゃないだろうか、と思ったんです」

氷点下の世界を鮮やかに描く絵には、短く、けれど命の重みを感じる言葉が添えられています。

 

 

「絵本という形ですが、子供だけに向けて描いたつもりはなく、大人が読んでも響くものとして制作しました。命をテーマにすると、生きる、生かされるという主体と客体にわけた構成が多いですよね。でも本来、命の循環のなかに主体は存在しないはず。それぞれの命が、最終的にひとつに混ざり合っていく感覚を、絵を通じて表現してもらいました」

冒険家が手がけるはじめての「絵本」。細部までこだわった制作についての詳しいお話は、ぜひトークイベントで。

 

『PIHOTEK ピヒュッティ-北極を風と歩く-』トークイベント

 

絵本のことばを書いた北極冒険家 荻田泰永さんと、絵を担当した「世界で最も美しい本コンクール」銀賞受賞の作家 井上奈奈さんおふたりを招いてトークイベントを開催します。

絵本からも見えてくる北極の情景を、より詳しく荻田さんに聞いたり、おふたりの間でどのようなやりとりがあってこの本が生まれたのかなどお伺いします。

 

開催日:2022年11月13日(日)

時間:14:00〜16:00

料金:2000円(1ドリンクつき)

定員:20名

会場:バリューブックスラボ2階(長野県上田市中央2-14-33)

※本と茶NABOの2軒となりです

【申し込み方法】

▶︎オンライン参加のご予約・支払いはこちらから
https://pihoteknabo.peatix.com/view

▶︎会場での参加のかたは
nabo.books@gmail.com まで
・参加者氏名
・人数
・電話番号
をご連絡ください。

【駐車場】

本と茶NABOの駐車場をご利用ください。

駐車場が満車になることが予想されますので、満車の際は近隣の有料駐車場へ駐車をお願いします。

▶︎最寄りの駐車場ご案内

黒崎駐車場(NABO、バリューブックスラボ、NABOまで歩いて3分程度です)

http://search.ipos-land.jp/p/detailp.aspx?id=M2000233Z

 

【フェア開催中!】

『PIHOTEK ピヒュッティ-北極を風と歩く-』出版記念フェア
2022.10.28(金)-11.20(日)
本と茶NABO(長野県上田市中央2-14-31)
営業日:金土日 12:00-18:00

posted by 北村 有沙

石川県生まれ。上京後、雑誌の編集者として働く。取材をきっかけにバリューブックスに興味を持ち、気づけば上田へ。旅、食、暮らしにまつわるあれこれを考えるのが好きです。趣味はお酒とラジオ。

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