EndPaper

本に触れる。
その小さなきっかけを届ける
ウェブマガジン。

2022-07-05

本屋が描く世界 – VALUE BOOKS 創業15周年

 

私たちバリューブックスは、古本屋です。

本の買取と販売に注力し、全国から毎日届く2万冊の本と向き合いながら、本の循環を続けています。

ただ、創業から15年という歳月が流れるにつれ、気がつけば様々なプロジェクトが生まれました。

 

・本の買取金額をNPOなどに寄付する「チャリボン」

・長野県上田市に構える実店舗の本屋「本と茶 NABO」

・保育園や学校、病院などに本を寄贈する「ブックギフト」

・全国に本屋を届ける移動式書店「ブックバス」

・古紙回収に回った本をノートに再生した「本だったノート」

・『B Corpハンドブック よいビジネスの計測・実践・改善』を皮切りとした本の出版・流通事業

 

大小を合わせると、ここに列挙しきれないくらい、様々な領域に手を伸ばしてきました。

いまの自分たちの活動、目指している未来の姿を考えると、「古本屋」という言葉だけではこぼれ落ちてしまうものがあるのではないか。

そんな思いから、私たちの現在地から見ている光景を1枚のイラストに落とし込んでみました。

 

( Illustration – Maki OTA )

クリック(タップ)で、より大きな画像が表示されます

 

このイラスト、つまり本の世界には、たくさんの人の姿があります。

古本の買取・販売を主とする私たちのサービスと倉庫を(いったん)中央に据え、左には私たちに本が届く前の光景、右には私たちから飛び立っていった本の光景を描いています。

 

たとえば、本を生み出し、届ける人たちがいる。

物語を紡ぐ作者だけでなく、紙をつくる人、紙に言葉やイメージを刷る人がいる。彼らによって生まれた本は、さまざまな形で流通し、本屋や図書館の棚から読み手に届く。

 

たとえば、本を読む人たちがいる。

子どもから大人まで、年齢や住まい、人種を問わず、熱心にページをめくる多くの人たちがこの世界にはたくさんいる。

 

たとえば、誰かが読み終えた本を、受け取る人がいる。

持ち主の手から離れた本を受け取り、またその面白さに魅了される人がいる。そして、古紙にせざるを得ない本を集め、新しい紙へと変わるよう命を吹き込む人がいる。

 

 

人が生み出し、人が読み、人が受け繋いでいる、本という大切な存在。

バリューブックスは、本を取り巻く社会の循環をもっと自然に、無駄の少ないものにしたいと思っています。

 

そして、どこかでやっぱり、「私たちは古本屋だ」という意識も消えないのです。

誰かが読み終えた本に価格をつけて買い取り、販売を通して次の読み手に届けていく。その仕事をもっと充実させることが、本を取り巻く循環をなめらかにする一助になると信じています。

 

 

ただ、正直な気持ちとして、こうして現在の取り組みや目指す未来について語ることに、大きなためらいもあります。

私たちの活動のなかには、まだ十分に機能していないものや、途中で力尽き消えてしまったものも、たくさんあります。いつも悩み、堂々巡りを繰り返し、長い時間と労力をかけて、元いた場所に帰ってくることも少なくありません。

 

「私たちは、こんな活動をしています」

 

そうやって言葉にする時には、いつも裏側に「でも、まだまだなんです。力が足りず、できていないことが、たくさんあるんです」といった後ろめたさが、たしかな存在感を持って残っています。

 

自分たちの言葉が、まるで美しく実った事実のように聞こえてしまうことが、怖い。

言ってしまえば、こうして日々の活動と少し先の未来をただイラストにすることでさえ、私たちには勇気のいることでした。

 

その揺れ動きもきちんと届けたくて、今回のイラストにはところどころにモヤモヤとした雲がかかっています。

 

 

これからも、バリューブックスは悩み続けます。

それでも、諦めずに新たな挑戦を続けます。

 

ためしながら、戻りながら、苦悩しながら、でも、そうした自分たちらしさを大切に受け止めて、螺旋のようにゆっくりと広がっていけるように。

 

(おそらく)終わりのない道の途中ではありますが、多くの協力と愛を受けてまずは15年、歩き続けることができました。本当に、ありがとうございます。

揺れ動きつつも楽しみながら、本に対して、読者に対して、作り手に対して、関わる多くの人たちに対して、自分たちのできる仕事を届けていきます。

posted by バリューブックス 編集部

BACK NUMBER