本屋をやるつもりじゃなかった。
けど、本屋として10年やってきた。
これから、10のことはじめます。

10 PROJECTS

01 BOOK BUS PROJECT

STORY

10年間で
課題が見えてきました。

本屋をやるつもりじゃなかった。

2005年。私は、最初から本屋をやるつもりだったわけではありませんでした。大学を卒業したものの、社会に出る自信がない。だからお金も経験もないのに、起業でもできないだろうかとぼんやり考えながら、生きづらさに苦しんでいました。

そんなとき、たまたま手元にあった教科書をインターネットで売ってみたら、思いのほか高く売れたのです。ひょっとしたら、就職しなくても、これでやっていけるかもしれない。都内の新古書店のセールを狙って、古本を買っては、インターネットで売る日々がはじまりました。だんだん利益が出るようになり、会社を辞めた友人が合流したりして、少しずつメンバーも増えていきました。仲間と、一緒に本を大量に買ってきて、それがすぐに売れていく日々は、すごく刺激的で楽しいものでした。

2007年.仲間は5人になり、このまま続けていても先がないのではないか、と感じるようになりました。そこで私たちは、新古書店で買うのではなく、自分たちが直接、お客様から買い取ることにしようと決めました。会社を立ち上げ、古本の買取サイトをつくることにしたのです。

これが、包み隠さずありのままの、私たちバリューブックスのはじまりです。

社会の役に立つかもしれない。

私たちの手元に、日本中から古本が集まってくるようになりました。しかし、市場に在庫があふれてしまい、インターネットで値段がつかなくなった本は、やむを得ず古紙リサイクルに回すことになります。創業当初は正直、私たちはそのことを何とも思っていませんでした。けれどその規模が大きくなるにつれて、いつの間にか日々ものすごい量の本を廃棄していることに気づき、なんとかその本たちを、少しでも世の中のために生かすことができないかと考えるようになりました。

そこで2010年に、その中でまだ価値のある本を必要としている場所に無償で届ける「Book Gift Project(ブックギフトプロジェクト)」をはじめました。そこで初めて、本を通じて社会の役に立つことができる、という実感を持ちました。私たちが売っているのは単なるモノではなく、誰かの人生を変えてしまうほどの力を持った「本」なのだということに、あらためて気がつかされたのです。

2012年には、古本の寄付を集めてNPOや大学の活動資金に換える「charibon(チャリボン)」をスタートしました。より事業性と社会性を両立できる仕組みにしたい、と考えた結果です。最初は、立川の「育て上げネット」さんという1つのNPO団体とスタートしたこの活動も、段々とパートナー団体が増え、利用していただける寄付者の方も増えていきました。現在までの5年間に、およそ3億円の寄付の仲介をすることができました。事業を行う上での気づき、様々な人との出会いがきっかけで、少しずつ社会に対する自分達の役割を考え、話し合うようになってきました。

まだまだ課題はたくさんある。

現在、私たちの会社は長野県上田市に3つの倉庫を稼働させています。地元に暮らす方々とのコミュニケーションの拠点として、「NABO(ネイボ)」というブックカフェも経営しています。会社の売上は年間20億に迫るところまで成長しました。

けれどこれまでお話してきた通り、私たちの10年間は、最初からビジョンやミッションがあったわけではありません。小さな気づきの積み重ねで、ここまでやってきました。だから、まだまだできていないこと、もっとできることだらけだという認識と、常に隣り合わせでいます。

いまのところ、私たちの課題は、大きく3つに分類できると考えています。

1つ目は、事業に関する課題。私たちの事業の中心は、買取と寄付とで集めた本を、インターネットで販売することです。いわば、それぞれの本の価値を見出して、その本を次に必要としている人に届けることですが、行先の見つからないものはいまも、大量に古紙リサイクルに回しているのが現状です。この量をもっともっと、減らしていきたい。多様な販路や届け方、必要としている人や場所を見つけていくことで、集まってくる本を、その本が最も生きる、次の居場所に振り分けられるような会社でありたい、と考えています。

2つ目は、その事業を核とした、本の循環に関する課題。私たちは今まで、ひたすらに目の前の古本を扱ってきました。けれどそれらはすべて、著者や編集者やその他たくさんの関係者が魂を込めてつくり、それを出版社が発行し、取次が流通し、書店が販売したり図書館が貸し出したりした結果、回りまわって私たちの手元に届いているはずです。そのそれぞれに、もっとも川下にいる私たちから、サービスや利益を還元する回路をつなぎたい。より良い本が生まれていく持続可能な循環をつくっていくために、我々だからこそできることがあるのではないかと考えています。

3つ目は、それらを実現していく私たち自身の、働き方に関する課題。現在バリューブックスには、総勢400人近い仲間がいます。ただ単に就職したくなかった仲間の集まりだった私たちのもとに徐々に、子育てしながら働く主婦・主夫、大学に通いながら働く学生、自分の生き方を模索する若者たちが集まり、本当に本が好きで仕方ない仲間や、社会の様々な問題に強い関心を持つ仲間も増えてきました。この社会で生きづらさを感じている、ちょうど創業当時の私たちのような人たちや、子育てや介護など人生の様々な課題を抱えている仲間たちも、もっと安心して働ける会社にしたい。もっと多様な働き方を受け入れて、いろんな人に活躍してもらえる会社にしたい、と考えています。

創業10周年を迎えて。

想像してみます。一緒に働く仲間。私たちが暮らす、長野県上田市の地域社会。私たちが扱う「本」を日々生み出している出版業界。そして「本」を読む人々がたくさんいる世界。ごく近くから、ずっと遠くまで、私たちひとりひとりが想像力のはたらく限り見つめて、そこから見えてきた課題に着手していくことは、いま・ここから世界をほんの少し、良い方向に変えることにつながっているのではないか。少し大げさかもしれませんが、本気でそう思うのです。本屋が変われば、世界が変わるかもしれない。

バリューブックスはこのたび、創業10周年を迎えました。それを機に、この10年間で発見してきた大小さまざまな10の課題に、あらためてひとつずつ、向き合うことにしました。これから10の取り組みを発表していくことを、ここに宣言します。

株式会社バリューブックス 代表取締役 中村大樹

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日本中から、本屋が少しずつ減っている。
あらゆる場所に、本屋を届けたい。

BOOK BUS PROJECT

ブックバス・プロジェクト

一日に一軒のペースで街から本屋がなくなり、本屋のない自治体は全国で1/5に達すると言われています。日々全国から本を買い取り、全国に本を送っている私たちのサービスは、確かに便利かもしれません。けれど大量の本に実際に触れる経験がなければ、自分がどんな本を読みたいのか気づく機会もなくなってしまうでしょう。私たちにできることは何かと考えた結果、バスを走らせることにしました。